血小板の大量生産や網膜移植など、iPS細胞を使った再生医療の研究成果が次々と発表されている。先端科学分野で後れを取っていると見られがちな日本の産業界だが、この分野では世界をリードしている。しかし、国の規制や縦割り行政が今後の発展の足かせとなることが懸念される。

 金融危機の真っただ中だった2008年半ば、世間は、市場が制御不能に陥った、従来当たり前に機能していた金融システムが崩壊したという話題でもちきりだった。

 そんな時、東京大学医科学研究所で幹細胞研究に取り組む中内啓光教授は高校の同窓会に出席し、旧友の姿を見つけた。数十年前に共に麻布高校を卒業した三輪玄二郎氏だった。

 卒業以来、顔を合わせる機会があまりなかったとはいえ、中内氏は、三輪氏がこれまで投資に関する仕事をしてきたことを知っていた。再生医療の草分け的存在である中内氏は、三輪氏にこう訴えた。「今何が起こっているか、見てみたまえ。君たち金融畑の人間はずいぶんひどいことをしてきた。そろそろ世界を良くするために何かすべきではないか」。2人の間で、ある会社を設立する話がまとまったのは、それから数週間後のことだった。