リーマンショックから10年、ローレンス・サマーズ氏の「長期停滞論」の予測は外れ、米経済は好調だ。だが、サマーズ氏が論じたようにマクロ経済的パターンは危機前も今も変わっていないのかもしれない。経済は成長しているのにインフレが起こらず賃金も上がらない真の要因を見据えた政策が求められる。

長期停滞論を2013年に提唱したローレンス・サマーズ元財務長官(写真=AP/アフロ)

 金融危機の最悪の時期から5年たった2013年、米国の元財務長官ローレンス・サマーズ氏は国際通貨基金(IMF)の会合で演壇に立ち、米国経済の回復についていくつかの見解を示した。

 当時、米国の経済回復は停滞していた。深刻な景気後退の間に失われた成長を取り戻せそうな兆しは見られなかった。失業率はようやく7%をわずかに下回る程度だった。

 この停滞は、歴史的な景気悪化の余波であると説明されることが多かった。しかしサマーズ氏はこの時の講演で、別の可能性を考えねばならないと指摘した。すなわち、米国はときおりバブルを挟みながら不況となるパターンにおちいっていて、実際は金融システムがまひする07年8月よりずっと前からそのパターンにはまり込んでいた可能性があるというのである。