トランプ米大統領が「史上最悪の貿易協定」と呼ぶNAFTAの再交渉が始まった。米国が求める貿易赤字の縮小を実現するのは無理筋だ。だが交渉次第では、統合エネルギー市場の誕生など全加盟国が恩恵を得られる成果も期待できる。

NAFTA再交渉に臨む3国の代表。左からライトハイザー米USTR代表、カナダのフリーランド外相、メキシコのグアハルド経済相(写真=AP/アフロ)

 1994年当時、米国経済は戦後最長となる景気拡大局面*1に入ってようやく3年がたったところだった。

 原油の生産量はそれまでの40年間で最も低い水準に落ち込んでいた。スティーブ・ジョブズ氏がまだ戻っていない米アップルの株式は1ドルちょっとで買うことができた。インターネットの利用が急拡大していることに気付いたジェフ・ベゾス氏がヘッジファンドの仕事を辞め、新しいタイプの小売業(編集部注:現在の米アマゾン・ドット・コム)を立ち上げたのも94年だった。

 北米自由貿易協定(NAFTA)はこの年の元日に発効した。これに加盟した米国、カナダ、メキシコは、この後10年で輸出入品に対する関税の大半を撤廃すると誓った。