トランプ米大統領が進める保護主義政策をめぐって懸念と期待が渦巻いている。懸念は、自由貿易がもたらす恩恵を葬り去ること。だが、裕福な国に限れば、この懸念は当たらないかもしれない。期待は、中国が米国と伍す技術大国になるのを防ぐこと。この期待を実現するには遅きに失した感がある。

アディール・ターナー卿
米マッキンゼー・アンド・カンパニーや英スタンダードチャータード銀行取締役などを経て、2008年から13年まで英金融サービス機構(FSA)長官。現在は投資家ジョージ・ソロス氏が設立した新経済思考研究所のチェアマン。『Economics After the Crisis』など著書多数。

 ドナルド・トランプ米大統領が進める保護主義政策が、人々が長らく享受してきた世界貿易の恩恵を台無しにするとの懸念が広がっている。その一方で、この政策に希望を見いだす向きもある。彼らは、米国が厳しい政策を取れば、中国が米国に太刀打ちし得るテクノロジー大国になるのを阻むことができると考える。彼らの大半は米国企業を含むトランプ氏の支持者たちだ。

 だが長期的にみると、世界貿易が縮小するとの懸念は大げさにすぎるかもしれない。保護貿易主義によって中国を抑え込めるとの希望も満たされることはないだろう。

中国は2018年5月、「長征4号」を打ち上げ、通信衛星「鵲橋」の軌道投入に成功した。世界で初めてとなる月の裏側への探査機着陸への布石だ(写真=AFP/アフロ)