技術は日進月歩だが、統計上の生産性は伸びていない。多くの経済学者がその理由を分析している。統計の取り方の問題、一部の企業による経済独占、労働集約型産業の比重が高いなど、様々な仮説が考えられている。新技術の浸透には時間がかかり、AIなどが生産性を押し上げるのはまだだいぶ先となりそうだ。

 「コンピューター時代の到来は、あらゆる分野で見られるようになった。だが、生産性の統計となれば話は別だ」。これは、現代の成長理論の礎を築いたノーベル賞経済学者、ロバート・ソロー氏が1987年に述べた名言だ。この言葉の「コンピューター」を「テクノロジー」に置き換えると、名言は今日でも通用するものとなる。

 現代はあらゆるテクノロジーが画期的な変化を遂げている時代だ。しかし、一国の経済状況をフロー面とストック面から分析した国民経済計算を見ると、生産性はほとんど伸びていない。この伸び悩みは統計上の錯覚なのだろうか。それとも技術革新自体が幻想なのだろうか。どちらでもないのなら、この謎はどう説明すればよいのだろうか。

 生産性が本当に伸び悩んでいるとしたら、ことは重大だ。やはりノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は「生産性がすべてではない。だが長期で見れば、ほぼすべてだ」と論じた。生活水準の向上は、労働者1人当たりの生産性の増加にほぼ全面的に依存している。実質所得がなかなか増えないことや、高所得国に緊縮財政への圧力がかかっている主な理由も、生産性の伸び悩みにある。米プリンストン大学のジーン・グロスマン氏ほか3人の共同論文は、1人当たり所得の伸びの目立った鈍化が、先進国の労働分配率の低下にもつながっているとすら主張する。