世界最強の囲碁棋士を破った米グーグルのAI(人工知能)技術。次なる標的は「データサイエンティスト」だ。人間に頼ることなくAIを進化させる「AutoML」が、その適用範囲を広げる。

シリコンバレー支局 中田 敦
1998年、日経BP社入社。日経コンピュータやITproの記者として、クラウドやビッグデータ、人工知能を担当。2015年4月からシリコンバレー支局長。
<b>AutoMLを発表したグーグルのスンダル・ピチャイCEO (最高経営責任者)</b>
AutoMLを発表したグーグルのスンダル・ピチャイCEO (最高経営責任者)

 世界最強の棋士、柯潔(か・けつ)九段との三番勝負に、米グーグルが開発した囲碁AI「アルファ碁」が全勝した。その強さの秘密は「深層強化学習」にある。AIが自ら試行錯誤を繰り返すことで賢くなる「強化学習」と、神経回路を模した「ニューラルネットワーク」を多段に積み重ねる「ディープラーニング(深層学習)」とを組み合わせた技術だ。

 2016年3月に韓国人棋士のイ・セドル氏に勝利した当時のアルファ碁は、深層強化学習に加えて、人間の棋士が指した3000万件の棋譜を参考にする「教師有り学習」も併用していた。最新のアルファ碁は、棋譜に頼ることなく、深層強化学習だけで16年当時よりさらに強くなったという。

 深層強化学習を考案したのは、英国のベンチャー企業ディープマインドだ。グーグルは14年、設立4年に満たないディープマインドを5億ポンド(当時の為替レートで約850億円)で買収し、デミス・ハサビス氏をはじめとする研究チームを手に入れた。

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日経ビジネス2017年6月5日号 94ページより目次

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