保護主義を掲げ、多国間交渉を基本とする既存の貿易ルールを非難するドナルド・トランプ米大統領。彼が否定するのは冷戦後、米国自身が中心となって掲げた資本主義、民主主義に基づくルールや価値観にほかならない。彼の動きに追随する勢力が増えれば、世界は「勝者なきゼロサムワールド」に陥りかねないと筆者は懸念する。

ドナルド・トランプ米大統領の保護主義は、これまで米国が中心になって形成してきた政治や経済のルールをことごとく無にしようとしている。その言動に歩調を合わせるかのごとく、世界でポピュリストが台頭している(写真=ロイター/アフロ)

 ドナルド・トランプ米大統領は独裁的な支配者たちに惜しみない称賛を送ったり、貿易障壁を設けるなど、国際的なルールや制度をないがしろにしている。その言動からは、自由主義に基づいた国際秩序をひっくり返したがっているようにしか見えない。

 だが全てをトランプ氏のせいにすることはできないだろう。こうした一連の出来事のほとんどは、トランプ氏が大統領になる前から起こっていたのだから。トランプ氏はもはや、混乱に向けて突っ走る一つのシンボルになりつつある。

 旧ソビエト連邦の共産主義の崩壊が何を意味していたのか、西側諸国は読み誤っていた。冷戦後、市場原理に基づく資本主義、そして自由主義と民主主義は世界秩序の中心となったが、この事実を紆余曲折の末に人類がたどり着いた歴史の必然で、未来永劫続くイデオロギーであると捉えるのは、思い上がりだった。