産業界を代表する経営者と識者が繰り広げる本編の予測合戦。だが世の中には、もっともっと大胆でユニークな予測を掲げる者たちもいる。ここで一回休憩し、異能アントレプレナーだけが語る新春大展望に耳を傾けてみよう。
帰ってきた伝説の金型職人
岡野工業代表社員
岡野雅行(83歳)
未来なんて
知らないよ
岡野雅行(83歳)
知らないよ
日本一有名な町工場経営者。「深絞り加工」を武器に「痛くない注射針」など独自部品を次々開発し、その名は今も世界中に知られる。本誌久々の登場となる「伝説の金型職人」のマシンガントークは健在だ。

おー、久しぶりだなあ、日経ビジネス。で、今日は何? 2017年の予測?
知らないよ、そんなもん。もう俺も何年も生きられないし、未来がどうとか知ったこっちゃないよ。前も同じこと聞きに来たよな。5年前?(注:2011年12月26日号「異色企業家だけに聞いた2012年大胆予測」)。そん時、俺、何て言った? 「日本はとことん落ちる」? あー同じ同じ、それと同じ。中小企業の経営環境は5年前となんも変わってない。さらに悪くなっているよ。
もう周りもどんどん廃業でさあ、跡継ぎもいないよ。町工場がなくなってモノ作りができなくなったら、この国はどうなるんだろうね。安倍さんも頑張っているけど地場産業を何とかしてもらわないとね。
日本はどうしようもない
技術者も面白いやつ、減ったよなあ。今はみんなスマホで「ピッ・ポッ・パ」だろ。創造性も何もありゃしない。まあ、親の教育も悪い。「大学行け、大学行け」ばっかりで技術の大切さなんて何も教えないからな。
そんな状況でも製造業が生き残るには他人がやらないことをやることだよ。これも5年前に言ったよな。近所に、1枚の鉄板から鈴を作る技術を持ったプレス屋があるんだな。もう50年にもなるだろうけど、いまだほかじゃできないんだから。こういうことをしないと。これも5年前に言ったか?
そういう俺もまだ創作意欲はあってさ、最近、マグネシウムを加工して100万円のかばんを作ったんだよ。使い道? 知らないよ! 登山家と一緒だよ。山がそこにあるから登りたいんだよ。加工が難しいマグネシウムを俺ならここまで加工して「岡野健在」をアピールしたいの! 軽くて頑丈だから、航空機のシートやカメラのボディーとか応用範囲は広いと思うよ。
まあ、昔ならこういうことすると大企業も飛びついてきたんだが、みんな仕事に情熱がなくなっちゃったのかな。「もっと安く作れませんか」としか言わないしな。
俺さ最近、初めて吉野家の牛丼食べたんだよ。ありゃうまいな。それで300円台とかだろ。自分で作ったってそんなに安くできやしない。そのあたりは、日本はまだ大したもんなんだよな。モノ作りももっと、頑張んないといけないんだけどな。
- 1. 日本はさらに悪くなる
- 2. 日本人自身も劣化
- 3. 牛丼はおいしいまま
Powered by リゾーム?