自然災害が予断を許さぬ理由

 つまり同じリスクでも、自然災害は「何が起こるか分からない」、外交については「過剰な心配をする必要はない」というのが、取材に応じた予測家たちの結論と言っていい。本誌もこの意見に原則として同意する。いずれの見解もともに、最新の経済理論に合致している。

 自然災害で「100年、1000年に1度しか起こり得ないはずの天変地異」があっさり起きてしまうのは、この世界が必ずしも正規分布に基づいて動いているわけではないからだ。

 経済学者の多くは長らく「世界で起きる現象は正規分布に基づいて発生する」と考えてきた。

 偏差値でおなじみの正規分布が幅を利かす世界では、平均に近い現象ほど発生頻度が高く、遠い現象は頻度が低い(偏差値で50前後の生徒はクラスにたくさんいるが、70以上や30以下の“極端な生徒”にはなかなかお目にかかれない)。私たちが「1000年に1度の出来事は自分が生きている間は起こらない」と妄信するのは、社会の動きを、この正規分布のイメージで捉えているからだ。

 こうした点に疑問を抱き、「世界はもっと“めったに起こらないはずのこと”が簡単に起きる」と主張したのが、数学者のマンデルブロだった。彼が完成させた「べき分布」の下では、正規分布の世界ではまず起きない極端なことが想像以上の頻度で起きる。

 2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災などはその好例で、この考えの下では、富士山噴火も含め、何が起こるか分からないのは当然のこととなる。

 ならば、尖閣諸島や南沙諸島を巡る大規模な局地戦争だって起きて不思議はないのでは、という話になるが、その可能性は低い。自然災害と異なり、外交は人為でコントロールできるからだ。

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