電子立国の父
元シャープ副社長
佐々木 正(101歳)
テレパシーを手に
「共創」は加速する

 スティーブ・ジョブズ氏も孫正義氏も、この人なくして成功はなかった。世界で初めてIC(集積回路)電卓を開発した、元シャープ副社長の佐々木氏。佐々木氏が仕掛けた電卓戦争でLSI(大規模集積回路)の小型化が加速。液晶などの技術開発も推進し、現在のコンピューター社会の基礎を築いた。1世紀以上生きてきた「電子立国の父」が、100年後の日本に抱くのは希望か、絶望か。いつものように、アイデアを書き留めた小さなメモ帳を手に、衝撃の予測を展開した。

(写真=菅野 勝男)
(写真=菅野 勝男)

 つい先日、夢で「三途の川」を見ましてね。特に病気をしていたわけではなかったのですが、いよいよかなと思いました。石を1つ積んでは誰のため、2つ積んでは誰のためと、ちゃんと数えないと川を渡してやらないという声まで聞こえて。ところが、数えているところで目が覚めました。不思議ですね。もう、あの世を見てきたようなものですから、未来も見える気がします。

 私がトランジスタで電卓を作ってから、コンピューターの世界は急速に進歩してきました。最近では、AI(人工知能)が現実のものになっています。

 ただ、現在のAIは数字や理屈の世界から出ていません。数字や理屈で表せない世界をどう扱っていくのか。三途の川のような夢の世界もその一つかもしれませんが、コンピューターはいずれ、こうした領域にも入り込んでいくでしょう。

 私はそれを、「カンピューター」と呼んでいます。理屈ではない、「勘」の領域にまで進出したコンピューターです。今は、コンピューターが進歩したといっても、人間は物事を判断する時には勘に頼ることが多い。しかし、いずれは「勘とは何か」という問題もコンピューターは解決していく。

人知を超えた世界に向かう

 その先は、勘だけではなく全ての人間の判断を模倣できるようになる。私はそれを、判断の「判」を取って「ハンピューター」と呼んでいます。そうなった時、人類の脳とAIの差はよく分からなくなる。つまり、人類はAIと「二人三脚」で歩むようになるはずです。

 そんな世界では、思考が他者に瞬時に伝達する「テレパシー」のような技術も、人類は手に入れているかもしれません。例えば、落ち葉に火をつけることを想像してください。1枚の落ち葉に火をつけると、周囲の枯葉に徐々に燃え伝わって、遠くにある落ち葉もやがて燃え始めます。しかし、これがある落ち葉を燃やした途端、瞬時に遠くの落ち葉も燃え始めるような、そんなことが可能になる世の中になる。

 落ち葉につく火は、アイデアの火です。ある人が思いついたアイデアが、瞬時に他者の思考と共鳴して、判断を下したり、イノベーションを生み出したり。要するに、私が昔から主張している「共創」は加速する。それに向けて、人類も進化していかなければならない。

 そうなるには、どのような技術が必要かですか? それは、三途の川から戻ってきた私なんぞではなく、若い人たちが考えることです。

 一つ、アドバイスできることがあるとすれば、もはや、人類もコンピューターも、数字や理屈だけを頼りにしていてはダメだということです。テレパシーや念力といった、これまでは人知を超えた世界だと思われていたような現象も、科学の力で人類の未来にどのように活用していくかという発想が、これからは求められる。そういうことまで考えないと、人類はコンピューターに使われるような世界になってしまいかねない。

 人類が高い志を掲げて進化し続ければ、100年後の日本、そして世界は安泰です。

佐々木氏の予測
  • 1. 夢の世界もコンピューターの領域に入る
  • 2. 人類はAIと二人三脚で歩む
  • 3. 数字や理屈だけの世界は終了

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