国際都市TOKYOの設計士
森ビル社長
辻 慎吾(56歳)
AIとバイオが都市に融合
外資のアジア本社が戻る

 日本経済のエンジン、東京の都市開発で常に時代を先取りしてきた森ビル。辻社長は、東京のランドマーク「六本木ヒルズ」「虎ノ門ヒルズ」など、最先端の技術やコンセプトを取り入れた大規模開発を手掛けてきた。都市開発のビジョナリストが描く「10年後の東京」とは?

 ここ数年、外資系企業のアジア地域本社の多くが、東京からシンガポールや中国・香港などに次々と出ていってしまいました。原因は、東京が潜在能力を発揮できていないからです。治安などは他の都市よりずっといい。オフィス床面積は、米ニューヨークの約2倍、中国・上海の約20倍もある。治安も環境も良く子育てもしやすい。本来、東京は世界で勝てるんですよ。

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)

 では何をどうすればいいのか。ヒト・モノ・カネを引きつける総合力を高めることです。私は今後10年で、東京の競争力は飛躍的に高まり、外資系企業のアジア地域本社の多くが再び東京に戻ってくると確信しています。

 最初の追い風が、2020年の東京オリンピックです。各種インフラは間違いなく格段に向上するし、外国人誘致の政策で国際性は一層高まります。

 そしてオリンピック後も、追い風はやまない。都市開発で技術革新が起きるからです。10年後にはAI(人工知能)など先端技術が形になってくる。森ビルが数年前から、「都市とAI」「都市とバイオ」などをテーマに、米マサチューセッツ工科大学のメディアラボなどと共同研究や実証実験を進めているのは、そのためです。

 AIの進展で自動運転が現実のものになれば、玄関先まで無人のクルマが迎えに来てくれるようになる。高層マンションでもそうした駐車場を設計することは可能です。カーシェアリングが当たり前になりますから駐車場は減り、スペースを有効活用できます。

 オフィスビルでは清掃や郵便物の配達がロボットの仕事になる。セキュリティーのあり方も大きく変わる。現行ハイビジョンの16倍の解像度を持つ8Kカメラを使って、容疑者を画像分析で自動的に識別しながら追跡するようなこともできるようになるでしょう。

「良いバクテリア」満ちたオフィス

 さらにバイオテクノロジーの活用で、オフィス環境はより快適になる。例えば、オフィスにいる悪いバクテリアを殺し、良いバクテリアを増やすような空気を空調設備からビル内に流せば、仕事をしながら健康を維持・増進できるオフィスも作れるかもしれません。

 これらの先端技術は、東京が世界に先駆けて都市に組み込んでいくことになる。様々な分野で世界を代表するイノベーターやクリエーターが、東京にはたくさんいる。こうした才能と都市開発がどんどん結びつきます。

 10年後、東京は必ずアジア、そして世界最先端の都市へと復権します。

辻氏の予測
  • 1. 五輪開催は発展への跳躍台
  • 2. 外資のアジア本社機能が戻る
  • 3. AIとバイオの融合で世界最先端の都市開発が実現

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