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飢餓とは縁遠い日本社会、そこに様々な制度や支援が人々を支える。もはや、カネのためだけに、会社で働く必要はない──。そうして「労働」を放棄した人々が、自らの能力を小さな地域で開花させていた。

地域おこし協力隊として遠野に移住してきた起業を目指す人々。定期的に集い、互いの事業の進捗を報告し合う

 柳田國男の『遠野物語』の舞台となった岩手県遠野市。座敷わらしやかっぱなど、柳田がこの地の不思議な伝承を記してから約100年。遠野には再び不思議な生態系が生まれつつある。

 「ベーシックインカムで起業できる仕組みをつくる」

 そう宣言するネクストコモンズラボ代表理事の林篤志が、最初の「実験地」として4年前に選んだのが遠野だった。

 新しい社会の構築を目指す林は、総務省が2009年から実施している「地域おこし協力隊」の制度に着目した。地方に移住して活躍する人材の支援制度で、1人採用すると自治体に年最大400万円が支給される。隊員は、ここから月15万円程度の「給料」を受け取る。