徳島県の小さな漁村に、都心から若き企業人や芸術家が流入し、地元に溶け込み、家族を作っている。17社という「日本一」のサテライトオフィス地域で、人々を結束させる「祭り」という仕掛けとは。

大阪のIT企業からオフィス開設で美波町に移住した小林武喜氏。町で式を挙げ、子供も生まれた

 町の伝説となった結婚式があったのは2年前のことだった。

 大漁旗を翻らせた船が花嫁を乗せてやってくる。沸き返る住民は、海の幸と酒で小林武喜を手荒く祝福した。

 それは、小林が小さな漁村に受け入れられた証しでもあった。

 4年前、大阪のIT企業、鈴木商店の一員として、徳島県美波町の漁村にサテライトオフィスを開く任務を負ってやってきた。だが、壁は厚かった。

 わずか30世帯が寄せ集まった集落は、「よそ者」に家を貸すことに抵抗を示した。空き家はあるが、貸してもらえない。そもそも家賃相場すらなかった。何度も足を運び、町役場の人にも協力を仰ぎ、契約にこぎ着けた。