IT(情報技術)をはじめとした技術革新によって、ユニークな職業が誕生している。ドローンパイロットやIT酪農家、そして盆栽アーティスト・・・。市場が成熟しても「新しい仕事」が次々に生まれれば、路頭に迷いはしない。
限界集落なんて作ってたまるか!
青木慶哉 Yoshiya Aoki
MIKAWAYA21社長

text by 小紫雅史
生駒市長
「ビジネスとパブリックのバランス感覚に秀でた経営者」。ひと言で表現するならば、こんな言葉がしっくりとくる。青木さんは、もともと奈良県生駒市で新聞販売事業を展開していた。私が市長を務めるこの生駒市は、日本でも上位5%に入るほど高齢化が急速に進んでいる。きっと青木さんは、新聞販売の現場で、その現実を痛感したのだろう。
新聞販売の営業所を拠点に、60歳以上のシニアに向けて、30分500円で彼らの困っていることを解決する「まごころサポート」サービスを立ち上げた。
日本社会が直面する高齢化の問題。解決するには、民間企業の力が欠かせない。
もちろん、我々自治体も汗をかく必要があるが、常に予算や人員の制約がつきまとう。高齢者向けのサービスを継続し、さらに拡大するには、ビジネスとして成立させることが不可欠なのだ。だから私は、青木さんの取り組みに注目している。
最近では「まごころサポート」を進化させ、ドローンを活用して過疎地や山奥などに住む「買い物難民」の高齢者に荷物を届ける実証実験にも乗り出している。こうした取り組みが、きっと日本の高齢者を救うはずだ。
初めてお話を聞いた時、青木さんは落ち着いた様子だったけれど、言葉の端々から、事業にかける情熱が伝わってきた。
青木さんの持つビジネスセンスと、社会課題を何とか解決したいという情熱。「ビジネスとパブリック」を融合させて、青木さんは日本の高齢化社会を救うのだろう。
臆病だから撮れる、至高の映像
請川博一 Hiroichi Ukegawa
ドローンパイロット

text by 宮下 俊
オムニバス・ジャパン社長
請川さんは、ドローン操縦・空撮の第一人者。ドラマやテレビCMの業界では、一目置かれる存在だ。そんな請川さんは臆病者だ。本当は人一倍臆病だから、あんな素晴らしい空撮ができるんだと思う。
臆病の原点は、飛ばすのが難しかった頃のラジコンヘリコプターに由来する。常にかじを細かく打っていないとヘリはホバリングできなかった。右に滑る前にその予兆を感じて逆の左にかじを入れる。移動し始めてからかじを打っていたのでは機体は停止しない。
そんな卓越した技術を持っていても、昔のラジコンヘリコプターは、まあよく落ちた。落ちる時にいかに被害を少なくするかというのは、経験からしか得られないことだ。たくさんの鍛練と墜落の経験が、フェイルセーフ(故障しても事故が起きない対策を施す)の考え方を自然と身に付けさせた。
最近のドローンは、確かに安定がよく、極端なことを言えば素人でも飛ばせてしまう。技術の進歩は素晴らしいのだが、本当にそれで安全と言えるのか。請川さんはそのことをよく心得ている。「シングルローター機(ラジコンヘリ)の静演技を完璧にできる操縦技術と、ドローンをマニュアルで安定して自由に飛ばせる技術が必要」とよく言っているのはそのせいだ。
だからパイロット育成にものすごく熱心だ。請川さんの教育は厳しい。でもその厳しさが日本のドローンの将来にとても大切だということを彼が一番知っているのだ。
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