異なる2つの才能を併せ持ち、両分野で活躍する「二刀流」。名刺の2つの肩書に「/」を入れるため、付いた異名が“スラッシャー”。世界は今後、彼らのような突出した人材をますます必要とする。

57

キラキラした眼差しの先に、新世界
近藤那央 Nao Kondo
TRYBOTS代表

(写真=佐藤 裕信)
(写真=佐藤 裕信)

text by 井口尊仁
DOKI DOKI INC CEO

 神田明神近くのオフィスで初めて出会った時、那央ちゃんは女子高生で好奇心全開。キラキラした眼差しでハードコアな技術課題を語り合える。ウエアラブルコンピュータが示す未来に想像を巡らしていた。

 キラキラしたその眼差しの先には、彼女ならではの夢想的世界が輝いていた。

 ペンギンロボットの開発をずっと根気強く続けている。女子大生となった那央ちゃんは、技術的鍛錬の賜物として、ますます本格的な夢想の世界観を磨き続けているようだ。 AIBOとカメとハムスターを同時に飼っていた少女は、その時感じ取った「生物の神秘的とも言える精巧さ」と、人を惹きつけてやまない根源的魅力の探求を今も進めている。

 そう、彼女とロボティクスについて語るのは極めて価値がある。人工知能を応用したヒューマノイド型ロボットを語る際の、見慣れた世界観とは異なる。彼女が標榜する動物的ロボティクスは人類の視界に一体何を指し示すだろう?そして、那央ちゃんがテクノロジー世界のアイドルとして降臨する日はそう遠くないのかも知れない。

 僕らがターミネーターやチャッピーなどで見聞きして想像を巡らす、知能をコアにしたロボット世界。彼女が将来創造する「野生のロボット」達が凌駕し、我々の世界観への更新を迫った時、テクノロジーの世界地図は鮮やかに書き換わるだろう。

 僕は、その日を楽しみに待っている。

Profile
ペンギンロボットの開発を手掛ける 「ロボット技術者/女子大生」
1995年生まれ。慶応義塾大学環境情報学部在学中。高校時代にペンギンロボット開発チーム「TRYBOTS」を結成。ミスiD 2015受賞。
58

世界的研究者は、四児の母
松岡陽子 Yoko Matsuoka
元グーグルX創設者、元アップル・ヘルスケア部門リーダー

(写真=林 幸一郎)
(写真=林 幸一郎)

text by 星 岳雄
米スタンフォード大学教授

 松岡陽子さんには先日、スタンフォード大学のウーマノミクスコンファレンスで、一流の研究者であり、四児の母親でもあるご経験を基に、特に科学技術分野での女性の活躍について論じてもらった。

 松岡さんの経歴は類を見ない。プロのテニスプレーヤーを目指して渡米後、UCバークレーでロボット研究に魅せられ、研究の道に入る。MITで博士号を取得し、グーグルXを立ち上げ、アップルのヘルスケア担当幹部でもあった。

 研究開発と母親の両立は大変ではと問うと、予想しなかった答えが返ってきた。「母親業に専念せず、ある程度距離をおいた方が良い母親になれる。仕事ばかりでなく、ある程度離れる時間がある方がかえって集中できる」。なるほど。家庭と仕事の両方で緊張感を保つ方がそれぞれをより楽しむことができるのだろう。世界的な研究者として、母親として、ますますの活躍を期待している。

Profile
四児の母でもある 「元アップル幹部/ロボット工学専門家」
1971年生まれ。16歳で渡米し、ロボットやAI研究の道へ進む。「天才賞」とも言われる米マッカーサー賞を受賞。大学教授を経て、グーグルやアップルの幹部を歴任。