教訓生かしたマルハニチロ
はごろもフーズとは対照的に、迅速な対応で炎上を防いだのがマルハニチロだ。同社は11月4日、セブン&アイ・ホールディングスに供給するPB(プライベートブランド)のサンマ缶などに、製造設備の金属片が含まれていたと発表した。
11月1日に該当商品の購入者からの第一報以降の同社の対応を詳細に情報開示するとともに、回収することを表明。回収の対象数は約2779万個に上り、翌日の株価は一時下落したものの、大きな影響は出なかった。


マルハニチロには苦い経験がある。2013年12月末にグループ会社の旧アクリフーズ(現マルハニチロ)の工場で発覚した、冷凍食品への農薬の混入事件だ。これは元契約社員の男(懲役刑が確定)が起こした犯罪だったが、マルハニチロの姿勢も厳しく批判された。
当該商品に関する購入者からの通報は同年11月中旬からあったにもかかわらず、調査・公表まで1カ月半もかかっていた。さらに、中毒症状が出る農薬の毒性を当初過小評価して発表するなど、報道対応もお粗末そのものだった。生産現場の管理体制の不備も多数指摘され、同社に批判が殺到した。
これにより、マルハニチロは防犯カメラやフードディフェンス担当の設置などハードとソフトの両面で再発防止策を抜本的に見直す必要に迫られた。同時に、ひとたび製品への苦情が寄せられれば、即座に本社の品質管理やリスク管理の部門が連携し、対処に当たる体制を構築した。
今回のケースでは、同社は異物の混入防止策として導入した検査機の精度が不十分だったと分析。商品の回収だけでなく、検査機の精度の再確認といった再発防止策も併せて発表するなど、過去の教訓を生かした。
食品メーカーや小売りによる商品の回収は、行政当局から指示・命令が出る場合を除き、基本的には各企業の判断に委ねられる。病原菌など重大な健康被害をもたらすものである場合と、昆虫など身体に被害を及ぼす可能性が低い場合とで、回収すべきかどうかの判断は変わってくる。
はごろもフーズが当初、缶詰を回収しないことを決めたのも一つの判断。だが、消費者は被害そのものだけでなく、企業の姿勢を厳しく見ている。マニュアルに沿った対応に終始していては、消費者の信頼を損ねることになる。
消費者問題研究所の垣田達哉代表は、「危機管理マニュアルを準備しておくのは当然だが、その上で謙虚な姿勢に徹し、柔軟に対応することも必要になる」と指摘する。
マニュアルやセオリーに依存する思考停止に陥らず、自らの言葉での対応が求められるのは記者会見も同じだ。
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