炎上を防ぐために何が必要か。リスク管理のためのマニュアルは基本中の基本だ。だが、消費者への誠意や現場の目線をトップが持たなければ、謝罪の効力はなくなる。不正や不祥事を律する自浄能力を持てるかどうかが、組織の命運を分ける。

多くの食品メーカーが、「食品企業の事故対応マニュアル作成のための手引き」(食品産業センター発行)を基にマニュアルを整備している(写真=スタジオキャスパー)

 いつまでたってもなくならない食品への異物混入。日本の消費者は食の安心・安全への関心が極めて高いため、食品メーカーや流通企業が最も神経を使う課題となっている。

 各社とも厳格なマニュアルを作成・運用しているが、今年、異物混入への対応で明暗を分けた2社が業界関係者の話題を集めた。「シーチキン」で知られる缶詰大手のはごろもフーズと、水産大手のマルハニチロである。

「手引きに準じて対応」と発表

 はごろもフーズが「お詫びとお知らせ」という題名でリリースを発表したのは10月27日。2014年に製造された「シーチキンLフレーク」の製造工程で、ゴキブリと思われる虫が混入していた。10月13日に購入者の指摘で事態を把握しながら公表を控えていたが、テレビ報道を受けて謝罪。リリースで「再発防止に努める」と声明を出した。

 ここまでは珍しい話ではない。ただ、異例なのが次の一文だった。

 「現時点では連続性がないことから、『食品企業の事故対応マニュアル作成のための手引き』に準じて対応を行い、またお申し出いただいたお客様への対応を最優先させていただいたため、結果として公表が遅れたことをお詫び申し上げます」

 手引きとは、業界団体である一般財団法人、食品産業センター(東京都港区)が2009年に発行した冊子のこと。食品事故の防止や発生時の広報、消費者・取引先への対応などの重要事項をまとめている。SNSの影響が大きくなっていることなどを踏まえ、2016年に情報の管理や消費者への対応について盛り込んだ改訂版を発行した。

 手引きでは、虫の混入は身体に危害を及ぼす可能性が低いとし、原則として「当事者間で解決」としている。食品メーカーはこれを参考に独自のガイドラインを定めており、はごろもフーズも「自社の基準に沿って判断したが、外部機関の客観的な視点が入っていることを示すべきだと考えた」(広報担当者)と説明する。

 しかし、リリース内で黒子役の手引きを引き合いに出したことで、「公表が遅れたり、回収しないと判断したりしたのは手引きを基にしたせい」との印象を抱かせた。食品産業センターの関係者は「なぜリリースにわざわざ記載したのか、違和感があった」と困惑する。

 消費者からの批判を受け、はごろもフーズは翌28日に改めてリリースを出し、製造した静岡市内の協力工場での製造を当面休止すると発表。

 追い打ちをかけるように、11月に入って同じ工場で過去にも虫が商品に混入する事案が発生していたことが判明した。「マニュアル対応」に加えて「隠蔽体質」との批判がさらに広がった。結局、11月11日に開いた決算記者会見で、異物混入防止のための抜本的な対策を国内外の自社・協力工場50カ所以上で導入すると発表した。