高く買わせるための罠?

 「冷めた天ぷらはカラッと元通りになる、トーストも焼ける、ゆで卵もできる……。なんだってできるって言われれば誰だって買いたくなります。でも今は電子レンジとしてしか使っていません」。東京都世田谷区在住の主婦、田中明子さん(仮名、42)は5年前に買った日本製のオーブンレンジについてこう苦笑する。

 10万円近いお金を払って買った商品が、2万~3万円の電子レンジの役割しか果たさなくなった一番の理由は、あまりにも多機能すぎて使いこなせないからだ。

 「例えばダイヤルで番号を合わせてボタンを押せば調理できる自動加熱っていう機能があるのはいいが、番号が20以上あって、スペアリブは〇番、焼き鳥は×番などと決まっている。あれ全部覚えて使いこなしている人っているんでしょうか」(田中さん)

 牛乳を温めるのは△番、ご飯をしっとり温めたい時は□番、普通でいい時は別にある「あたため」を押す……。さすがにその程度は覚えられるが、だったら「牛乳あたため」「ご飯あたため」という専用ボタンがついた電子レンジの方がずっと簡単で使いやすい。

 楽しみにしていた独自のオーブン機能も調理時間が想像以上にかかり、「忙しい共働き家庭にはとても使い物にならない」(同)。一度オーブンを使うと庫内の温度が冷めるまでレンジを使えないのも誤算だった。

 「『あれもできる、これもできる』はメーカーが消費者に商品を高く買わせるための罠」。田中さんは今や、そう信じて疑わない。今後買いたい家電は「挙げるとすれば、機能が絞り込まれたバルミューダ」だ。

機能を増やせば顧客は離れる

 物はいいはずなのに、なぜか酷評される──。そんな商品の3つ目の特徴は、余計な追加機能を搭載していることだ。

 NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが18年4月に実施したネット調査(総投票数1万345)では「使っていない機能が多い家電」として「スマートフォン・携帯電話」(得票率32%、以下同)、「電子レンジ」(24%)、「炊飯器」(6%)、「体重計」(6%)、「洗濯機」(5%)、「食器洗い乾燥機」(4%)の6品目がやり玉に挙がった。

 13年にニフティが実施した調査(総得票数3784)でも、家電に関する失敗体験で1位となったのは「使ってない機能があり宝の持ち腐れ」(得票率男性28%、女性35%)だ。

 そんな消費者の気持ちを反映してか、電子レンジ市場では既に異変が起き始めている。日本電機工業会(JEMA)によれば17年度の同市場は前年度比4.7%増の343万8000台だったが、全体の約7割を占める「オーブンレンジ」は伸びず、2桁増となって市場をけん引したのは「単機能レンジ」だった。

 消費者の間で広がる「多機能への不満」。それはハードの世界にとどまらない。「何か機能を足すと、少なからず離脱する人がいる」と話すのは、スマホ向けニュースアプリを開発するGunosy(グノシー)の大曽根圭輔事業部長だ。

消費者が望むのは「1アプリ=1用途」 ●グノシーが開発する記事閲覧アプリ
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 Gunosyではアプリの機能変更をする時、まず一部のユーザーだけに更新を促し、離脱率をチェックしてきた。必ずといっていいほど変更によってアプリを使わなくなる利用者が現れるからだ。試行錯誤の結果、たどり着いた結論は「1アプリ=1用途こそがユーザーの満足率を高める」である。

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