日本を筆頭に先進国で高齢化が進むが、米国は比較的健全な人口構成を保っている。ビジネス環境も良好で、企業向け、消費者向けともにビジネスの伸びしろが大きい。トランプ大統領の誕生で不確実性は高まっているが、市場としての魅力は不変だ。

ブルックリン・ブルワリーの本社兼工場。同社のビールを愛するファンは少なくない(写真=2点:Mayumi Nashida)

 米ニューヨーク・マンハッタンの対岸、ブルックリンの一角にあるクリーム色の古びたビール工場で、キリンホールディングスの磯崎功典社長と、米地ビール大手、ブルックリン・ブルワリーの創業者、スティーブ・ヒンディ氏は固い握手を交わした。

 その2日前の10月12日、キリンビールはブルックリンと資本・業務提携すると発表した。ブルックリンに約25%を出資するとともに、同社主力の「ブルックリンラガー」を日本国内で生産するという内容だ。

 米国のビール消費量は中国に次ぐ年2250万キロリットル。市場自体の伸びは横ばいだが、輸入ビールやクラフトビールの市場シェアは急速に伸びている。

 キリンビールにとって今回の提携は、「ブルックリンラガー」を擁して日本国内のクラフトビール市場を開拓するだけでなく、「一番搾り」という輸入ビールとブルックリンラガーで米国市場を攻める意味合いがある。「個性的でエスニックなビールが米国でようやく受け入れられつつある」と磯崎社長は語る。

確実にもうけられる米国市場

 日本を筆頭に高齢化が進む先進国。だが米国は若い国民が多く、伸びこそ鈍化しているが、移民の流入も続いている。また、経済成長率では中国に劣るものの消費が旺盛。知的財産保護や金融、物流などのインフラが整備されており、ビジネス環境は悪くない。

 しかも、ルールにさえのっとれば、企業がしっかりともうけられる市場だ。

 日本企業の海外子会社の稼ぎを示す第1次所得収支を見ると、米国における2015年の黒字は5兆9000億円と中国の1兆4000億円を大きく上回る。個別のセクターを見ても、売上高に占める米国のウエートは自動車、電気、精密機器で年々増加している(トップ5社の合計)。

 日本企業は2000年代、強烈な勢いで成長する中国や東南アジアへの進出を加速させた。その流れは続いているが、経済成長の減速を受けて米国に目を向ける企業が増えた。それはトランプ大統領の誕生でも変わらない。