ホワイトハウスを手中に収めたトランプ氏はオバマ大統領のレガシーを廃絶するだろう。だが、景気拡大が終盤にさしかかる中、彼に吹いているのはフォローの風だけではない。国民を満足させるには成長が不可欠だ。保護主義を貫けば自身に火の粉が降りかかる。

オバマ大統領が進めた進歩的な政策は、その多くが解体されていきそうだ(写真=AP/アフロ)

 世界中に衝撃を与えた、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏の大逆転勝利。その余韻も冷めやらぬ翌9日、政治リスク分析で定評のある米ユーラシア・グループはトランプ政権誕生で起きるであろう“政策的粛正”を顧客向けリポートにこう記した。

 「オバマ大統領のレガシー(政治的遺産)は今後、粉々に解体されていく」

 既に多くの専門家が指摘しているが、オバマ大統領が尽力した「医療保険制度改革(通称、オバマケア)」は現状のままでは済まない。トランプ氏は、子どもが成人しても一定年数は親の保険に加入し続けられる条項など一部を引き継ぐ姿勢を示しているが、修正もしくは新制度に改編されるのは必定だ。

 選挙期間中、同氏がたびたび批判していた米連邦準備理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長も、2018年2月に任期が切れれば再任はないだろう。オバマ政権が採用した対話を重視する融和的な外交政策も恐らく否定される。

 選挙期間中の公約を守るのかという疑念は付きまとうが、トランプ氏はインフラ投資拡大を提唱しており、政府債務は増大する可能性が高い。法人税の引き下げを明言しているものの、白人低所得者層の支持を得る同氏がどこまで企業に親和的なのかは不明だ。

 もっとも、トランプ氏に吹き付けているのはフォローの風ばかりではない。

 7年半に及ぶ景気拡大はいずれ終わりを迎える。支持者が期待している所得向上を、世界が低成長に陥る中で実現するのは容易ではない。そして、自身を大統領に押し上げた主張が、巡り巡って米経済の足を引っ張る可能性もある。以下、トランプ氏を襲う3つの病魔を見ていこう。