事前の予想を覆し、第45代大統領の座をドナルド・トランプ氏が勝ち取った。だが、8年前とは異なり、憎悪に彩られた選挙戦は米国社会の拭いがたい分裂を白日の下にさらした。米国社会が内包する不満と矛盾を可視化したトランプ氏。今度は自らの手で紡ぎ直さなければならない。

8年前、オバマ氏が勝利演説を行ったシカゴ・グラントパーク。歴史が生まれた場所はひっそりと静まり返っていた(写真=Chiaki Kato)

 歴史が生まれたその場所は、夕日を浴びてひっそりと静まり返っていた。

 2008年11月4日。この日、米民主党の大統領候補、バラク・オバマ氏は共和党の大統領候補、ジョン・マケイン氏に大差で勝利、第44代アメリカ合衆国大統領の座をその手に収めた。初の黒人大統領になる人物を祝福しようと、勝利演説の会場になったシカゴ・グラントパークを訪れた支持者は最終的に20万人を超えた。

 「歴史に立ち会いたいと思ったんだよ」。当日、会場に足を運んだボブ・エイチェルバーグ氏は当時を振り返ってこう語った。「そう、あの日はとてつもなく長い行列ができていた」。

 そして午後11時。“Hello Chicago”と聴衆に語りかけたオバマ氏は民主主義の力、団結の重要性、そして、色あせつつあったHope(希望)の再生を語りかけた。鳴りやまぬ歓声──。そこにいた誰もが若き勝者に米国の未来を重ね合わせたに違いない。

 それから8年。米国の希望が落胆に変わり、怒りと無関心に転化することなど誰が想像しただろう。

(写真=AP/アフロ)

 2016年11月9日午前2時40分。米CNNに短いテロップが流れた。「クリントン候補、電話で負けを伝える」。その瞬間、米ニューヨーク・マンハッタンの街角では歓喜ともうめき声ともつかぬどよめきが響いた。純粋にドナルド・トランプ氏の勝利に酔いしれた人間もいれば、トランプ大統領が米国と世界に与えるであろう混沌を前に恐れおののいた人もいただろう。