中国西端の新疆ウイグル自治区は先進的な監視技術の実験場と化した。顔認識やGPS、スマホアプリなど技術の進歩が、デストピア(暗黒郷)を出現させた。
東京都内の機械メーカーに勤めるサッタル・サイム氏(仮名)は中国の新疆ウイグル自治区出身だ。同郷の妻と2人の子供とともに神奈川県で暮らす。故郷のカシュガルに残した両親は老齢に差し掛かった。時折スマートフォンのビデオチャットで呼び出し、様子を確かめている。
「元気ですか?」
いつもと変わらぬたわいのないやり取りになるはずが、その日は違った。
「私たちは共産党のおかげで暮らしていける」
「母さん、何だい急に」
「党が町をきれいに整備してくれたのよ、心配しないで」
唐突に中国共産党を褒めたたえ始めた母親に違和感を覚えた。問い詰めると、泣き出してしまった。
当局が通信を傍受している。そう気付くと背筋が寒くなった。下手なことを口走れば、母親は思想改造のために強制収容所に送られかねない。すぐにビデオチャットを打ち切った。
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この記事はシリーズ「特集 ここまで来た監視社会 勃興する第2のGAFA」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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