遠隔から乗っとられて140万台リコール──。自動車業界に衝撃が走った。「サイバー無策」なのはクルマも同じだ。開発プロセスそのものが変わる。

<b>2015年8月に開かれたサイバーセキュリティーイベント「ブラックハット」。セキュリティー研究者のチャーリー・ミラー氏(右)とクリス・バラセック氏(左)が「ジープチェロキー」をハッキングする方法を発表。140万台のリコールに発展した</b>(写真=Bloomberg / Getty Images)
2015年8月に開かれたサイバーセキュリティーイベント「ブラックハット」。セキュリティー研究者のチャーリー・ミラー氏(右)とクリス・バラセック氏(左)が「ジープチェロキー」をハッキングする方法を発表。140万台のリコールに発展した(写真=Bloomberg / Getty Images)

 2015年8月5日、自動車業界に衝撃を与える事件が米国で“実演”された。

 世界的なサイバーセキュリティーイベント「ブラックハット」で壇上に立った2人の研究者が発表したのは、クルマをハッキングする具体的な方法だった。標的になったのは、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のSUV(多目的スポーツ車)「ジープチェロキー」だ。

 2人はチェロキーに搭載された専用無線回線「Uコネクト」にセキュリティーの穴を発見した。その“穴”から不正な命令を送り、クルマのシステムを制圧。そしてパソコンを使って、ハンドルからブレーキ、車載ディスプレーに至るまで全てを操作する手法を公開した。実際に事故は起こっていないが、「クルマの乗っ取り」が現実のものとなった。

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