10年できる人を後継に

 問 日本電産の最大の課題は、「永守後」では。後継者問題をどう考えていますか。いつどのようにして譲るのですか。

海外のグループ会社を飛び回りイズムを伝える永守社長。日本での成功事例と実績が、海外でも受け入れられている

 答 10年ぐらいはやってくれて、世界を走り回れる若い人に任せたいね。できるだけ早く、これでいけると思うときにはやりますよ。本社に有望な人材がだいぶ出てきていますからね。

 僕の最大の課題は体力の限界ですよ。飛行機の夜行便でがんがん飛んだりするとか、もうあんまり無理したらあかん。そういうことができる人に社長を任せて、場合によっては会長の座も譲る。あとは『代表取締役グループ代表』みたいな感じで君臨する。まず次の社長はCOO(最高執行責任者)。そして、いずれCEOも渡す。

 問 どのような人物を選びますか。

 答 社内にも候補はおるよ。数人。でも、大事なのは、会社に変化を起こせる人、会社を大きくしようという強い意志を持った人じゃないとね。

 僕は創業者だから配当もあるし、それほど収入はいらない。だけど次の社長には何億円か払いますよ。別にお金のためにやっているわけじゃないやろうけど、結果責任を持つ人には何億円という報酬を払うべきでしょう。

できるだけ長生きして、
その間に自分の考え方を理解できる人を育てる。

 問 創業者の薫陶を受けた第1世代がいる間は強くても、その後に弱体化するケースが多くあります。

 答 大変難しい課題やね。それに対するはっきりとした回答はない。自分にできるのは、その間にできる限り大きな会社にして、優秀な人材が集まるようにしておく。中途半端ではいけない。

 あくなき成長のためにも創業者ができる限り長生きしないと。会長や社長を辞めて病院に入って車椅子でもいいけれども、死んだらあかん。生きていれば、何かあったら社長を呼んで『ちょっとおまえ、最近どうなっているんだ』と言える。それだけで違うんですよ。

 そして、自分の考え方を理解してくれる人をなるべく多く育てておくこと。その点、我々は成長分野をたくさん持っていますから、どんどん人材を集めていけるわけですわ。

 問 既に要職の多くを他社出身の人材が占めるようになっています。

 答 シャープなどからたくさんの人材が入ってくれています。元社長の片山(幹雄副会長)に『おまえのおかげでこんなに人が採れる』と冗談を言っているんですわ。優秀で即戦力になる人が多いわね。

 最近は『あの創業者の下でぜひ働きたい』と言ってくれる方も多いね。サラリーマン経営者はうんざりで、創業者の下で働きたいと。白黒はっきりしている日本電産みたいな会社でやってみたいという人と、ああいう会社は勘弁してほしいという人とはっきり分かれる。こっちも休みとか月給ばかり気にする人には来てもらいたくないしね。

 問 新しい人材が入る一方で、働き方の改革も進めています。その真意は。

 答 昔の人材がどうだというわけではないけど、時間で戦っていた面があったのは確か。まだ小さい会社やったからね。よそが8時間働いていたら、うちは16時間働くしかなかった。

 今は能力の高い人が集まってくれるようになって、本当に知的ハードワーキングに変わってきている。これは進歩ですよ。能力が高い人に生産性を上げてもらって、もっと高い給料を払うんやから。

 長時間働くだけで勝てる時代でなくなったこともある。うちの場合、モノ作りの生産性はかなり高いけど、間接部門はまだまだ。だから、残業がなくなった分で英語や専門知識を勉強してくれと言っています。

 今の最大の課題は語学力。世界の従業員11万人のうち、日本人は1万人。例えば技術者が英語ができるようになれば、お客のところに1人で行ける。それなら給料を上げてもいい。

 問 「モーレツ主義」はもうおしまいだと。

本社隣で建設が進むグローバル経営大学校の校舎(中央右側)。企業が持つ教育施設としては国内最大級で、永守社長は「世界中の人を集めて教育する」と言う(写真=小倉 正嗣)

 答 会社が『早く帰れ』と言うのは、世の変化に順応するため。脱皮しないとヘビは死ぬ。根っこは変えないけど、葉っぱは変える。日本電産を最も働きやすい会社、最もいい会社にしたいね。

 今、本社の前に立派な経営大学校を作っています。仕事が終わったら、そこでも教育するんです。働き方改革というのは足らない能力を付け加えるためにやるわけ。そこを社員にも自覚してもらわないとね。