先読みの鋭さとリスク感覚

 「3大精神」や「3大経営」、市場への一番参入などを掲げた「圧勝の3条件」、「3Q6S(3Q=良い会社、良い社員、良い製品、6S=整理、整頓、清掃、清潔、しつけ、作法)」に代表される永守イズムとは、そういう永守思想を分かりやすく形にしたものと言えるだろう。

 日本電産はその永守イズムを広げながら、他の日本企業にはない独特のグローバル化に挑戦している。

 買収した企業が自ら戦略を策定し、それを独自のマトリックス組織で様々な角度から支える。新技術分野に巧みに入り込み、自動運転やIoTの主役になろうとする技術戦略…。いずれも、永守ならではの先読みの鋭さやリスク感覚なくして成り立たない。

 しかし、永守が最も重視し力を入れていることは12年前と変わらない。人の意識を変えること。永守は今、同じことを繰り返しているだけとも言える。

 1年に100日も出張すると言い、72歳の今も毎月のようにプライベートジェットで海外を飛び回る。だが、そこで欠かさないのは「幹部から一般社員まで、それぞれと食事をして話し続けること」(永守)だ。

永守イズムを伝えるために作った「挑戦への道」(写真=スタジオキャスパー)

 永守イズムを伝えるために、自らの考え方を書いた「挑戦への道」という冊子を作り、英語など各国語に翻訳も始めている。だが、それだけでは本当の永守の考え方は伝わらない。だから、「『またその話かいな』と言われても、同じことを話す」。永守はそれを「千回言行」と言う。

 世に「○○イズム」や「○○ウエイ」などと呼ばれる経営者や企業の理念・哲学は多くある。しかし、それだけで企業と、そこで働く人の行動を変えられると思うほど、永守は甘くない。

 頭から爪の先まで日本電産カラーの緑色に染まるほど自身の考え方を刷り込んでいく。そうしなければ、永守流経営は途絶えると考えているはずだ。