この数年で次々に買収した海外企業。その経営者や現場が変わり始めている。買収先の技術をつなぎ合わせてシナジーを生み、車載などの新事業を創出する。日本電産の成長を支えてきた「永守イズム」が世界に広がり始めた。

ドイツの車載ポンプメーカー、NGPMは永守イズムで収益力が一変した。左下は、大河内裕仁CEO(右)とミハエル・グレルマンCOO

 ドイツ東部のテューリンゲン州マーベルスロッド。

 どこまでも広がるような田園地帯の中の町を2015年1月29日、永守社長が訪れた。姿を現したのは、車載用ポンプメーカー、ゲレーテ・ウント・プンペンバウ(GPM)の本社だ。

 GPMは、エンジンなどに冷却水や潤滑油を供給するポンプの欧州最大手。同社の買収を決めた永守社長が従業員に向けて、M&Aの狙いを説明に訪れたのだ。

 会場は緊張感に包まれた。

 「Nidec(日本電産)って何だ」

 「そんな会社に買収されて、我々の会社と雇用は大丈夫なのか」

 1000人近い従業員は不安な表情を浮かべたまま、日本からやってきた男を見つめた。永守社長はそんなことなど意に介することもなく話し始めた。

 「みなさんは素晴らしい製品を持っている。欧州だけでなく米国、アジアでももっと売れる。やればできます」

 横に通訳がいるとはいえ、日本語であることを気にもせずどんどんしゃべる永守社長。その強烈な熱気を前に、従業員たちの私語はやんだ。「GPMをもっと大きくしよう」。永守社長がそう言うと、会場に大きな拍手が響いた。

 日本電産グループに入ったことによって、「進捗管理の徹底などでコストを抑え、利益率をそれまでの2倍に押し上げた」とミハエル・グレルマンCOO(最高執行責任者)は言う。不安はまさに杞憂だった。