マツダや米エヌビディアなど、新たな仲間を増やすトヨタ自動車。旧来の取引メーカーとの関係強化も忘れない。まずは、トヨタが身近な存在だからこそ語れる私の「トヨタ論」。
マツダ 小飼雅道 社長兼CEO(最高経営責任者)
一気通貫のものづくりへの転換

恥ずかしいんですがね、私の生まれ故郷の長野県茅野市に聖光寺というお寺があって、7~8年前、まだ生きていた母親を連れて兄夫婦と桜を見に行きました。トヨタさんと一緒に仕事をするようになって初めて知ったのですが、そこはトヨタさんと関係会社が1970年に創設した交通安全のお寺でした。地元の人ですらそのことをほとんど知らない。トヨタさんは謙虚でひけらかさないけれど、いつも人々の安全を願っている。そんな会社だからこそ一緒に仕事をしていけると思ったのです。
10月2日に資本業務提携の手続きが完了しました。身の引き締まる思いですが、楽しみでもあります。
EV(電気自動車)開発の新会社では、それぞれが育ててきた手法を持ち寄ります。我々が提供するのは、5~10年先のモデルを全車種一括で、部品メーカーと議論しながら企画する「一括企画」と、コンピューターによるシミュレーションを活用して試作回数を減らす「モデルベース開発」の手法です。一方のトヨタさんは、(部品や車体を共通化して効率を高める)「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」を提供します。互いの財産を持ち寄ることで、新しいものが生まれるでしょう。
両社の開発者はすでに交流を始めていますが、トヨタの方々は常に謙虚で、新しい技術や知識に対して貪欲。その姿勢はうちの社員も学ばなければいけないと思っています。「トヨタは変わったか」と聞かれても、この点は昔から変わっていないと思います。
豊田章男社長は非常にシンプルな思考をされる方です。いいクルマを作ろうよ。そのために会社の垣根を越えて良い部分はお互い謙虚に認め合おうよ。日本のものづくり力を結集して、より良い商品をお客様にお届けしようとしているだけなのです。
章男社長はカンパニー制や社内ベンチャー制を導入して、会社を変えようとしています。組織を小さくすることで決断のスピードを速め、目的を明確にする。商品企画から開発、生産、販売まで一気通貫のものづくりができるようにする。当社もそうですが、一気通貫のものづくりの実現は、全ての自動車メーカーの喫緊の課題なのです。
新しいものは多部門の人が集まることで生まれます。当社では、そんな事例が出てきています。お客様から好評を頂いているカラー「ソウルレッド」も、開発と生産が一体となって生まれました。トヨタさんとの協業でも、そんな成果を出せればいいですね。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り6480文字 / 全文文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「特集 トヨタは変わったか?」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?