7000万人に浴びせられるフレーズ

 ポイントサービスの歴史は1980年代の米国から始まる。アメリカン航空やバージニア州が本拠のスーパー、ユークロップス・スーパー・マーケッツがまず導入。90年代に英国の大手スーパー、テスコが「テスコクラブカード」を発行し、2000年代に入ると日本でも普及が加速した。

年々着実に普及しているが…
●ポイント・マイレージの年間発行額
年々着実に普及しているが…<br /> <span>●ポイント・マイレージの年間発行額</span>
注:野村総合研究所調べ。2014年度以降は推測。推測値は最も少なく見積もった数字で、実際にはさらに多いと見られる
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 今では、異なる企業を横断して使える共通ポイントが人気で、「Tポイント」の会員数は2016年9月末で6000万人超、ロイヤリティマーケティングの「Ponta(ポンタ)」も8月末時点で7792万人に到達した。ただ、現実には休眠状態の会員も多く、レジで率先して共通ポイントカードを提示するのは多くても3000万人程度と見られる。とすれば、もともとカードがない人も含め7000万人以上の国民(乳幼児など除く)が、小売りや飲食など様々な場で、「ポイントカードはお持ちですか」というフレーズを浴びせられている計算になる。

 「顧客囲い込みのためには仕方がない」。そう考えている関係者がいるとしたら危険だ。ポイントカードの本来の目的は顧客の購買情報の収集。集まった情報を入念に分析し、品ぞろえやサービスに反映して初めて、顧客の囲い込みにつながる。導入するだけでは、一時的な集客には役立っても、中長期的には十分な効果はないのだ。

 「2000円分の残高があるから」と店に行き、2000円以上の買い物をしてしまい、新たなポイントがたまり、それを使うためまた店に行く──。これが「ポイントカード=囲い込み策」と考える人の見立てだが、消費者はそこまで単純ではない。

 逆に言えば、分析力があればポイントカードがなくてもリピーターは増やせる。大手家電量販店で唯一ポイントサービスを未導入のケーズホールディングスが、1947年の創業以来64期連続増収を達成したのはその好例だ。

 専門家の中には、レジ前での「カードを持っているか否かの確認作業」が顧客離れにつながる可能性を示唆する声もある。実験動物中央研究所や理化学研究所を渡り歩き、依存症を研究し続けて来た廣中直行氏(現マーケティング共創協会研究主幹)はその一人だ。

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