防衛装備と民生品の融合が進んでいる。化学メーカーの帝人は、高強度の繊維を防弾・防刃用途に生かす可能性を見いだす。一方、多摩川精機は戦車などに採用されている技術を自動車に転用した。

<b>6月にフランスで開かれた世界最大級の防衛装備見本市「ユーロサトリ」。10社以上の日本企業が出展した</b>(写真=永川 智子)
6月にフランスで開かれた世界最大級の防衛装備見本市「ユーロサトリ」。10社以上の日本企業が出展した(写真=永川 智子)

 防衛装備というと戦車や潜水艦が思い浮かぶ。だが防衛装備と民生品を隔てる垣根は急速に低くなっているのが現実だ。防衛関連企業と純粋な民生品メーカーを区別することも難しい。民生品だけを扱っていた企業が、軍を顧客とするビジネスを視野に入れ始めている。他方、防衛関連企業が防衛装備向けに開発した技術が、民生品に応用される事例も数多く登場している。

 日本政府が防衛装備移転三原則を閣議決定し、政策を転換する前から、現実世界ではこうした融合が進んできた。

 民生品や、民生品で培った技術を防衛用途に転用することを「スピンオン」と呼ぶ。パリ郊外で開かれた世界最大級の防衛装備見本市「ユーロサトリ」は、日本のスピンオンの現状を示す象徴的な場だった。

 2年に1度開かれるこの見本市の今年の会期は6月13~17日。151カ国・地域から約5万7000人が来場した。出展者は56カ国から約1600社・団体。日本企業も、確認できただけで10社以上が参加した(海外法人を含む)。

 広大な会場には装甲車や機関銃、ヘルメットなど、陸上用を中心に大小様々な装備が並んだ。世界各国からやってきた軍の高官や防衛産業関係者らは最新の装備や技術の動向を把握しようと、足早に出展ブースを回っていた。

 この会場で目立っていた日本企業は防衛関連大手ではない。主に民生品を扱う企業や中小企業が主役だった。

次ページ パナはパソコン、帝人は繊維