防衛産業はいかにあるべきか。その育成は安全保障上の観点から有益との見方もあれば、平和を脅かすことにつながるとの意見もある。識者から話を聞いた。


森本 敏氏
拓殖大学総長、元防衛相
航空自衛隊を経て外務省入省。2012年防衛相就任。2016年から拓殖大学総長。防衛政策に大きな影響力を持つ。(写真=清水 真帆呂)

 防衛産業が成長することで、日本の技術力を安全保障の向上につなげられるとみている。防衛装備移転三原則が閣議決定され、一部の技術を海外に提供する代わりに、日本の安全保障に役立つ別の技術を提供するよう求めることが可能になった。優れた技術を開発できれば、交渉を有利に展開することができる。

 この観点から、昨年発足した防衛装備庁に求められる役割は大きい。各国の防衛体制や政策の情報を収集し、日本の安全保障にどう影響するのかを分析する力が欠かせない。

 しかし、日本勢は国際経験に乏しい。オーストラリアに潜水艦を売る案件では、現地生産を重視した豪州政府の要望に対応しきれず、フランスに敗れてしまった。国内の防衛産業を見渡すと、海外で工場を造り、英語で技術指導できる企業は限られる。海外に進出する体制を早急に整えなければ、豪州の案件と同じ結果を繰り返すだけだと強調したい。

 技術育成のためには世界的な共同開発プロジェクトへの参加が望ましい。最新ステルス戦闘機「F-35」のプロジェクトでは、日本勢は最終組み立て・検査工程にしか参加できていない。企業参画をもっと広げたい。

 共同開発に招請されるためには、他国にはない優位性のある技術が必要となる。日本企業は部品や素材の開発・製造にたけている。政府は研究開発費を積み増すとともに、技術発掘にも目配りすべきだ。