ネット対応に乗り出そうとするキー局の足を引っ張るのが系列の地方局だ。放送枠を提供する見返りに、広告料の一部を分配金として受け取る。いびつな収益モデルにメスを入れようと、国も再編へ動き出した。

 「ネットでいつでもテレビ番組が見られるようになれば、系列局の存在価値がなくなってしまう」

地方局の多くはキー局系列に入る
●キー局が抱えるネットワークの一覧表
キー局名 ネットワーク名 加盟放送局数
日本テレビ NNN 読売テレビなど30社
TBS JNN 毎日放送など28社
フジテレビ FNN 関西テレビなど28社
テレビ朝日 ANN 朝日放送など26社
テレビ東京 TXN テレビ大阪など6社
独立局   東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)、サンテレビジョンなど13社

 昨年10月にサービスが始まった、地上波テレビ番組の見逃し視聴サービス「TVer(ティーバー)」。日本民間放送連盟(民放連)の井上弘会長(TBSテレビ名誉会長)が全国の民放各社に参加を呼びかけた。が、「全国の地方局が集まる会議で、反対の声が上がった」(TBS系列のある地方局幹部)。

 現状、TVerに番組を供給している地方局は、大都市圏以外には存在しない。そのことが、地方局の「抵抗」と足並みの乱れを如実に示している。

 TVerでは、テレビ受像機でネット動画を視聴できるようになる米グーグルの専用機器「クロームキャスト」への対応も検討されたが、見送られた。これも、「ネットにテレビ画面を奪われてしまう」という地方局の不信を払拭できなかったからだ。

 別の地方局幹部は「TVerに番組を提供するための初期費用は600万円。敵に塩を送ることになるだろうし、それ以前に商売になるかどうか分からないものにそんな費用をかける余裕はうちにはない」と打ち明ける。

崩れるキー局との相互依存

 ネットを取り込もうと動き出したキー局の前に立ちはだかる、地方局という壁。それは、両者のいびつな相互依存関係の産物でもある。

 東京に本社を構えるいわゆる「キー局」は傘下に地方局を抱える。例えば、日本テレビ放送網は「NNN」というネットワークで30社、TBSテレビは「JNN」、フジテレビジョンは「FNN」として28社ずつ束ねる。

 キー局はスポンサーから広告料を集め、地方局が抱える視聴者数などに応じて分配する。この分配金は「ネットワーク費」「電波料」などと呼ばれ、キー局が制作したテレビ番組をそのまま地方局で流す放送枠の対価として支払われる。ネットワーク費は大都市圏以外の地方局で年10億~30億円。売上高の3分の1程度を占める。

 キー局にとって系列の地方局は、広告主に対して「全国の主要都市に放送枠を持っている」とアピールし、広告媒体としての価値を維持するのに不可欠な存在。また、地方で事件や災害が起きた場合などは、地方局が取材した内容を活用することもできる。

 地方局にとっても利点は大きい。「クロ」と呼ばれる放送枠は、キー局制作の番組を流すだけでネットワーク費を得られる。一方、「シロ」と呼ばれる放送枠は自社制作の番組を流し、地元企業から広告費を集める必要がある。

 その「シロ」でもキー局のドラマやバラエティー番組を買い取り、再放送するケースが多い。「製作費をかけてローカル番組を作るよりは、質の高いキー局の番組を買った方がスポンサーの付きがいい」(フジテレビ系列の地方局幹部)からだ。その結果、現状では地方局の自主制作比率は放送枠全体の10%前後にとどまっている。

番組制作も東京に頼る地方局
●キー局と系列地方局との関係性