アマゾン、日本で20の独自作品

 アマゾンは今年5月、世界で製作中のオリジナル作品40本のうち、半数が日本向けであることを明かした。海外ではこれまで、ダークコメディーの「トランスペアレント」などのオリジナル作品がエミー賞やゴールデングローブ賞に輝いており、ネットフリックスを猛追している。

 日本では、人気俳優ディーン・フジオカ氏を起用したドラマ「はぴまり」などを6月から配信しており、年内に続々と追加される予定だ。

 国内での最大の武器は安さ。プライム・ビデオは、ネット通販の配送料などが無料となる有料会員「アマゾン・プライム」の付帯サービスの一つ。プライム会員の料金は米国が年間99ドル(約1万円)に対し、日本は3900円。月割りにすると325円相当で、国内外の映画やドラマ・バラエティーなど数千本を楽しめることになる。

 アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は「私たちが今、力を入れているのは、見ずにはいられないものにするということ。値上げは(しないので)ご心配なく(笑)」と話す。日本でのプライム会員数は数百万人規模とされ、一気に同程度の視聴者を獲得する可能性も出てきた。

 黒船が狙うジャンルはエンターテインメントに限らない。

Jリーグ放映権に2100億円

 今年7月、英国を拠点とするスポーツ関連のパフォームグループが、来年以降のJリーグの放映権に10年間で2100億円強を支払うと発表。スカパーJSATが支払ってきた年30億円を7倍超上回る値付けに衝撃が走った。

 こうした新興のネットTVは、市場から成長産業と目され資金を調達しやすい。加えて世界のどこでも視聴者を獲得できるため、国内に閉じた放送事業者は資金力で太刀打ちできない。

 例えばネットフリックスの売上高は年間で8000億円規模だが、今年はその7割以上に当たる60億ドル(約6000億円)以上を製作費に投じる。

 そうしたネットTVが徐々に地上波から視聴者と視聴時間を奪っていく。加えて、ネットTVによる「地殻変動」はテレビ局の産業構造も揺るがし始めている。次からその内実を解説する。

INTERVIEW
米ネットフリックス リード・ヘイスティングスCEO
日本でテレビ局との協業を拡大する
NETFLIX(ネットフリックス)
ネット動画配信の世界最大手。190カ国に展開し会員数約8300万人。日本では2015年9月に開始。独自作品に注力し、日本向けは「火花」など4作品ある。月額利用料は650円から。リモコンに専用ボタンが付いたテレビが次々に販売されている(写真=的野 弘路)

 成功の要因は、どの国においても我々が独占できる素晴らしいコンテンツを提供しているということに尽きる。日本では「火花」というオリジナル作品があり、「ハウス・オブ・カード」という英語圏向けのオリジナル作品も人気だ。

 そうしたコンテンツをあらゆるプラットフォームから簡単に視聴できる環境を整えていることも成功の要因。会員がどのプラットフォームで視聴しているかの内訳は公開していないが、iPhoneなどのスマートフォンでもよく見られているし、クロームキャストやAppleTVといったデバイスを通じたテレビでの視聴も世界的に人気の形態だ。

 新しいカテゴリーだが、リモコンに「NETFLIXボタン」が付いたスマートテレビも非常に誇りに思っている。ただ新しいテレビを全世帯が購入するまでには時間がかかる。革新の軸となるのは素晴らしいコンテンツを提供すること。しかも、ウルトラHD(4K画質)という高画質で楽しんでいただくことに注力していくだけだ。

 NHKやフジテレビといった従来の放送局と比べると、インターネット上のテレビはまだ始まったばかり。皆が模索している段階で、我々も大手テレビ局とコンテンツを共同で製作する協業を進めている。

 日本でもフジテレビと「テラスハウス」を共同製作するなど、協業が増えおり、今後、さらに多くのテレビ局と協業できることを望んでいる。新たなビジネスは、理解を得られるまでにはどうしても時間がかかる。辛抱強く、協業を模索しながら、大きな成功をともに得ていきたい。(談)


米アマゾンスタジオ(コンテンツ製作会社)ロイ・プライス代表
番組の「質の高さ」に注目してほしい
Amazonプライム・ビデオ
日本では2015年9月配信開始。年会費3900円の「プライム」会員であれば映画やドラマ、オリジナル作品のほとんどを視聴可能。今年、オリジナル作品を世界で40本制作。うち20本は日本向け。「Fire TV Stick」(4980円)などをつかえばテレビで視聴可能

 アマゾン プライム・ビデオのお客様は、オリジナルの作品に対して、非常にいい反応を示している。配信開始からしばらく時間がたっても(アマゾン内の視聴で)ナンバーワンを維持するなど、人気や評判は持続している。個別の視聴回数などの数字は公表していないが、作品がどのようなパフォーマンスか、人気順位によって想起できるので、だいたいはお分かりいただけるのではないかと思う。

 特に、ゴールデングローブ賞やエミー賞の部門賞を得たコメディードラマ「トランスペアレント」といったオリジナルの人気作品は、米国のみならず、英国やドイツなどでも世界的によく見られている傾向にある。

 オリジナル作品への投資規模も公表していないが、「多い」ということは言える。日本向けのオリジナル作品のラインアップを今年5月に一挙に発表し、一部は配信されている。視聴してもらい、クオリティーの高さを感じていただき、それがアマゾンなんだ、と思っていただけたら幸いだ。(談)

ディーン・フジオカ氏主演のオリジナルドラマ「はぴまり」(アマゾン プライム・ビデオの画面より)

英パフォームグループ動画配信部門 ジェームズ・ラシュトンCEO
スポーツの価値高める自信がある
DAZN(ダ・ゾーン)
欧州サッカーリーグや日本のプロ野球、MLB(米メジャーリーグ)、NFL(米フットボールリーグ)など130以上のスポーツ中継が見放題。月額1750円。2017年からはJリーグ全試合も対象に。選手・監督のインタビューなど独自番組も製作予定(写真=村田 和聡)

 家のテレビでも電車の中でも職場でも、いつでもスポーツを観戦できる、マルチデバイス対応が我々の最大の強みだ。あらゆる世代で端末の使い方が多様化する中、テレビしか対応しないというビジネスモデルはもはや通用しない。

 日本の放送局はスポーツ中継の放映権をバラバラに取得しているため、有料チャンネルで複数のスポーツを見るためには毎月1万円前後が必要だった。そこに需要があると見て、ランチ程度の手ごろな価格でパッケージとして提供することを決めた。

 我々は新規参入で、既存の顧客を抱えていない。視聴者が流出するリスクがないため、思い切った手を打つことができる。今回、Jリーグの放映権獲得に10年間で2100億円を投じたのもその一つ。これまで放映権を取得していたスカパーJSATよりも高額な契約が話題に上っているが、それには理由がある。スカパーの契約と異なり、我々の放映権料には製作費が含まれている。他のメディアも放映権の獲得を狙っていたが、我々にはスポーツコンテンツの価値をさらに高めることができるという自信があった。

 考えているファンサービスのひとつが、様々なデータの統合と分析だ。サッカーの試合でパス成功率などの統計をそのまま表示しても面白くない。試合がいつ動くかを予測するサービスを開発している。

 実現すれば、スポーツ観戦に新たな価値が加わり、視聴体験が強化されるだろう。長年、スポーツに特化したデータ提供サービスを手がけてきたからこそできる価値だ。(談)