米ネットフリックスなど海外の大手ネットTVが次々に日本市場を攻め始めた。世界中の視聴者をターゲットに、圧倒的な資金力でコンテンツを製作する。黒船来襲で、制作会社や演者、広告主などのテレビ離れも起き始めた。

今年6月末、ネットフリックスのオリジナル作品の出演者が東京に集結、日本市場への注力をアピールした(写真=的野 弘路)

 「人のマネするの死んでも嫌やって言うてましたよね。これ模倣じゃないんですか」──。気鋭の俳優、林遣都氏が迫真の演技を繰り広げるドラマ「火花」。又吉直樹氏の芥川賞受賞作を映像化したもので、今年6月から全10話が“放映”され、話題を呼んだ。

 流れるのは「NETFLIX(ネットフリックス)」のみ。パソコン、スマートフォン、テレビなどで視聴できる米国生まれの「ネットTV」だ。日本では昨年9月にサービス開始。月額650円からの料金を支払えば、ハリウッドや日本の映画・ドラマを含む多くのタイトルを無制限に楽しむことができる。

今年6月から配信されたNETFLIXオリジナルドラマ「火花」のワンシーン(写真=(C)2016YDクリエイション)

 240万部以上が売れた火花の映像化は国内のテレビ局や映画配給会社も一斉に狙った。だがネットフリックスはそれらを差し置いてドラマ化を実現、独占配信権を得た。

 制作費を含む火花の契約料は、本誌推定で6億~7億円、1話当たり6000万~7000万円程度とみられる。民放のドラマ製作費はゴールデンタイムで1話3500万円前後。NHKの大河ドラマでも、1話5000万円程度と言われており、ネットフリックスの“大盤振る舞い”は突出している。しかも火花は、地上波テレビでは実現していない、フルハイビジョンの4倍の解像度を持つ「4K」画質にも対応。各国言語の字幕付きで世界中にも配信されており、視聴の約半数が海外からという。

 資金力、4K、世界配信。日本へ上陸した“黒船”は、地上波が逆立ちしてもできないことをいきなりやってのけ、格の違いを見せつけた。

ハリウッド級の独自作品で成長

 ネットフリックスが動画配信を開始したのは2007年。2010年から米国外に進出し、約5年で世界190カ国まで展開した。今年6月末で8318万人の利用者を抱え、世界最大手の座を確固たるものにしている。

 米調査会社によると、過去1年にネットフリックスを視聴した米国民は全体の54%もいる。2位は動画サイト「ユーチューブ」で47%だった。昨年、北米で生じたインターネット通信量全体のうち、ネットフリックスによるものは約36%と突出している。

 この圧倒的な存在感の背景にあるのが、2013年から思い切った先行投資を続ける独占配信のオリジナル作品だ。

 2013年、約100億円もの製作費を投じた米政界を舞台にしたドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」を配信すると、その評判が瞬く間に世界へ拡散した。今年4月の渡米時、安倍晋三首相が「大ファンだ」と公言したほどだ。

 同作品には人気ハリウッド映画の監督・スタッフ、俳優が結集。優れたテレビ作品を表彰するエミー賞とゴールデングローブ賞をネットTVとして初めて受賞。躍進の契機となった。

 4000億~5000億円程度だった時価総額は2013年から伸び続け、今では4兆円以上に膨らんでいる。

 そのネットフリックスが今年、日本市場の攻略にも本腰を入れ始めた。

 「日本は市場とコンテンツの供給源の両面で非常に魅力的。ブロードバンドは3500万世帯に普及し、高い才能があるクリエーターがそろい、アニメやマンガは世界的に人気だ」

 1997年にネットフリックスを共同設立したリード・ヘイスティングスCEO(最高経営責任者)はこう話す。

 同社が米国以外にオフィスを構えるのは4カ国。うちオランダ、シンガポール、ブラジルは地域統括拠点だが、日本のみ一国を見るために置かれている。

 「数字は非公表だが、日本の会員数、視聴時間ともに、伸び続けている」と話すのは、日本法人のグレッグ・ピーターズ社長。オリジナル作品の製作部隊が常駐するのも、米国外では東京のみで、今年6月から順次、配信が始まっている。現在、日本発のオリジナル作品は火花を含め4作品。ピーターズ社長は「可能な限り速いペースで増やしており、いい話があればなんでもやる」と鼻息が荒い。

 ネットフリックスに並んで日本で攻勢をかけるのが、ネットTVの「Amazon(アマゾン)プライム・ビデオ」を展開する米アマゾン・ドット・コムだ。