国家機関の攻撃から自社を守るためには、自国の公的機関との連携が欠かせない。各国でその中枢的な役割を果たしているのが、軍や情報機関のサイバー諜報組織だ。しかし、自衛隊のサイバー部隊にはこうした役割を果たすことが制度上の縛りでできない。陸上自衛隊のサイバー部隊「システム防護隊」の初代隊長や、経済産業省のサイバーセキュリティ・情報化審議官を歴任し、今年7月から米セキュリティ企業大手、ファイア・アイの日本法人でCTO(最高技術責任者)を務める伊東寛氏に課題を聞いた。

(聞き手は寺岡篤志)

伊東寛(いとう・ひろし)氏
1980年、慶應義塾大学大学院工学研究科を卒業し、陸上自衛隊に入隊。2005年、陸自初のサイバー部隊である「システム防護隊」の初代隊長に就任。07年以降、米シマンテックやラックといった民間セキュリティー企業で研究職に就く。16年に経産省のサイバーセキュリティ・情報化審議官に就任。18年7月より米ファイア・アイ日本法人CTO。(写真:陶山勉、以下同)

1999年からサイバー戦を予想していた中国

まず、自衛隊でサイバー部隊が立ち上がった経緯を伺えますか。

伊東寛・米ファイア・アイ日本法人CTO(以下、伊東):始まりは2000年ごろですね。IT技術の進捗で、どこの企業も公的機関もIT化を進めていた中で、中央省庁のウェブページが次々に改ざんされる事件が起きました。これをトリガーにして、防衛省にもサイバー部隊の予算が付くようになりました。

 時期を合わせるようにして、ITと軍事技術の融合が進みました。