アマゾンにできないことを極限まで追求する。それは顧客のためでなくては意味がない顧客視点に徹して、企業に染み付いた固定観念を捨て去ることが重要だ。

(写真=上段左:朝日新聞社、同他3点:共同通信)

 「ドンキホーテは、アマゾンの合理性とは真逆の“非合理性”を突き詰めるために存在している」

 こう力を込めて語るのは、ドンキホーテホールディングスの大原孝治社長兼CEO(最高経営責任者)だ。

 どういう意味なのか。アマゾンはテクノロジーを活用して、検索性や商品の品ぞろえ、配送スピードなどを怒涛の勢いで進化させている。数値化できる合理的で分かりやすい戦略を追求する。年間2兆円を超える世界一の研究開発費を投じる巨人と、テクノロジーで競争しても、勝ち目はない。

 むしろ見たことがないような商品との偶然の出合いや、人間による接客など、一見すると非合理な「実店舗」の魅力を突き詰めるべきだ。大原社長はそう強く信じている。

 魔境──。ドンキホーテは実店舗をこう定義する。熱帯雨林やジャングルのような売り場でドキドキ、ワクワクする。顧客に強烈な印象を与える、この世に存在し得なかった店舗の形を追求することこそがアマゾンに勝つカギになると考えている。

 スマートフォンで音楽を聴く人も、休日にはライブ会場に足を運ぶ。「CDやDVDがアマゾンだとすれば、“ライブ会場”がドンキホーテで、顧客は両方を求めている」(大原社長)

ネット販売サイトの閉鎖を決断

 実店舗に注力するため、ドンキホーテは大胆な決断に踏み切った。自社で運営してきたオンラインショッピングモールを5月末で閉鎖したのだ。楽天市場やYahoo!ショッピングへの出店は続けるが、自社サイトでネット通販を展開しないのは、アマゾンに到底かなわないなら、競争を避け、「勝てるポイントに、経営資源を集中させる」という明確なメッセージだ。

 一方で、ドンキホーテは実店舗のドキドキ・ワクワクを高め、集客力を強化するためのデジタル化にまい進する。

 8月中旬、ドンキホーテは将来の店舗イメージの動画を公開した。スマホのアプリを起動して店内に入ると、売り場ごとに、様々なおすすめ商品の情報が自動配信される。食品売り場なら「(韓国風のピリ辛鍋の)スンドゥプチゲ作ってみた」といった動画を配信。店内を500歩歩くとポイントを付与し、ゲームなども配信する。ネット通販サイトは閉鎖しても、店舗の魅力を高めるテクノロジーは徹底活用する。

 バブル崩壊以降の約30年間で、ドンキホーテは小売業界で代表的な“勝ち組”企業へと躍進した。2019年6月期の売上高予想は1兆円で、30期連続の増収と営業増益を見込んでいる。