世界中で大ブームとなった「ポケモンGO」は、ビジネスや社会にどのような影響をもたらすのか。プラス・マイナスの両面から、衝撃の大きさを、それぞれの視点で評価してもらった。
イノベーションの本質を突く

楠木 建氏 くすのき・けん
ポケモンGOはイノベーションの本質を理解する格好の事例だ。イノベーションとは、製品やサービスの価値基準が根本的に変わるということ。例えば、スマートフォンの動作速度が上がって使いやすくなっても、スマホという製品の「良さ」は変わらない。これは「進歩」だ。
一方、ポケモンGOは、スマホの「良さ」そのものを非連続に変えた。バーチャルに閉じていたゲームの世界を、位置情報とAR(拡張現実)で現実の世界に持ち込んだ。誰もがスマホ片手にぞろぞろ歩く姿は不気味に見えるが、進歩ではなく良さの本質が「路線転換」をしたのだから仕方ない。
企業のマーケティングに与えるインパクトは大きい。消費者がモノを買うまでには、広告などを「見て」「読んで」「注意を払い」「店などに行き」「カネを払う」という段階を踏む必要があった。インターネットが普及し始めてから約20年、膨大な情報が氾濫し、カネを払うまでのハードルは上がる一方だった。
しかし、ポケモンGOは、利用者をいきなり店まで誘導し、カネを払う直前まで動かすことが可能なことを示した。マーケティングや観光など応用事例は無限にある。「歩きスマホ」など様々なリスクはあるが、サービスの進歩に伴って回避することは可能だろう。(談)
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