温泉宿もそば店も「便乗」

 日本全国で、ポケモンGOをビジネスや観光に生かそうという動きが急速に広がっている。ゲームの世界と現実の世界を融合させたポケモンGOは、ユーザーを特定の場所に誘導する集客ツールになるからだ。

販促や地域活性化の効果期待
●日本全国の主な「ポケモンGO」の活用事例

 日本マクドナルドはポケモンGOのスポンサー企業として契約し、全国の約2900店舗をジムやポケストップとして登録。サービス開始と同時にユーザーを店舗に誘導する仕組みを整えた。

(写真=陶山 勉)

 7月は既存店売上高が前年同月比で26.6%、客数は9.8%増えた。「『久しぶりにマックに行った』といった声が多数届いており、集客の実感はある」(同社の唐澤俊輔・ナショナルマーケティング部長)。本誌調査ではユーザーの約16%がマックで何らかの商品を購入していた(ページ末の「ポケモンGOのユーザー、300人の利用実態」参照)。

 ナイアンティックはスポンサー企業を増やす意向で、8月9日にはTOHOシネマズが提携を発表。同社のほぼ全ての映画館が「ポケストップ」になる。水面下では、基本的に1業種1社を前提に交渉が進められていると見られる。

 スポンサー契約をせず、独自に集客に活用する事例も増えている。

 神奈川県湯河原町にある温泉宿「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」は、宿泊客向けにポケモンGOのイベントを実施している。

 「ご夕食までの間、周辺のポケストップやジムにお連れします」。女将が宿泊客に声をかける。徒歩15分ほどの美術館や公園などにあるポケストップに案内。ポケモンの出現率を高める「ルアーモジュール」というゲーム内で販売されているアイテム(1個100円程度)を旅館が購入し、ポケストップに仕掛けて宿泊客を盛り上げる。同旅館の小峯友和支配人は、「うまく使えば顧客満足度を上げられると考えた」と語る。

(写真=菅野 勝男)

 「当店のお客様は60代が中心。若い世代を呼び込みたかった」。そう語るのは新潟県上越市のそば店「お蕎麦 慶(けい)」で、ポケモンGOユーザーに割引サービスを始めた関口義宏社長。ポケストップが集中する地元の名所、高田公園は3kmほども離れている。だが、多くのユーザーが公園でゲームを楽しんだ後、スマホの充電もかねて同店を訪れる。1日当たり6万~7万円だった売上高は20%以上増えた。

 鳥取県のように、地方活性化に生かそうという自治体も相次ぐ。

 「どうせやるならば、被災4県でやりませんか」

 宮城県の村井嘉浩知事は、ナイアンティック日本法人の村井説人社長に呼びかけた。8月10日、東日本大震災や熊本地震で被災した宮城県、岩手県、福島県、熊本県とナイアンティックの提携が発表された。ポケモンGOと連動した観光周遊マップ作成や集客イベントを開催し、復興につなげる。

 竹ざおにつるされた数々のちょうちんが、たわわに実る稲穂のように夏の夜空に揺れる、秋田市の竿燈まつり。そこで、秋田県はある実験をした。祭りばやしが聞こえ始める午後6時頃、会場そばの公園で県関係者がスマホを操作。しばらくすると男子高校生4人組が集まってきた。「お、ルアーモジュールが使われてる」。秋田県観光戦略課の中嶋結也主任は「位置情報ゲームの特性を、イベントでの客の誘導などに生かす方法を探っていきたい」と言う。

ポケモンを呼び寄せ集客に活用
●有料アイテム「ルアーモジュール」の使い方
秋田イングレス活用研究会の小林秀樹代表が祭り会場近くでアイテムを使うと、すぐにポケモンが現れた