最大の懸念は、振り出しに戻ってしまった後継者問題だろう。

 たとえソフトバンクグループがIoTのプラットフォームで覇者になれなかったとしても、事業売却という選択肢もあり得る。だが、事業承継は失敗が許されない。

 仮に不適格なトップが経営のかじを握れば、経営は負の連鎖に陥り、たちまち企業は凋落する。特にソフトバンクは孫社長の経営判断に依存しており、後継選びの重要度が極めて高い。

 その重みを誰よりも理解しているのは孫社長自身だ。社内外から後継者を発掘・育成するための「ソフトバンクアカデミア」を設立したほか、ローマ帝国やモンゴル帝国など何代も続いた帝国の研究に余念がない。

後継者を育成する「ソフトバンクアカデミア」のイベントで、孫社長はニケシュ・アローラ氏と抱き合ってみせた(写真=Bloomberg/Getty Images)

 その中で、グーグルで上級副社長だったニケシュ・アローラ氏を後継者に指名した孫社長。ところが、株主総会を翌日に控えた6月21日、突如、アローラ氏の退任を発表し、最大の懸念が再び顔をのぞかせた。

 孫社長も、こればかりは簡単に解決できないようだ。本誌の取材で「後継者問題というのは本当に難しいですよね。本当に難しい。それはこれから10年かけて解決していかなきゃいけないと。半年や1年で解決できるような問題じゃない」と胸中を吐露した。

 同時に、「社長を譲った後でも会長なのか何らかの形で(ソフトバンクグループに)貢献を続けていきたい」との意向も示したが、永遠に経営に関われるわけではない。どうすればソフトバンクグループは300年続く永続企業になり得るのか。その絵もまた、孫社長の頭の中だけにしかない。

 孫社長の意欲が高ぶり、描く絵が大きくなるほど、事業承継の難易度がさらに高まるというジレンマ。それはきっと超知性でも解決できない。

日経ビジネス2016年8月8日・15日号 16~19ページより目次