「20年後には1兆個のチップをばらまく」とソフトバンクグループ孫正義社長は豪語する。来るIoT時代の盟主となることを誓うが、米グーグルなどの強豪が待ち受ける。孫社長がインタビューで示唆した戦略を交えながら、4つの懸念を検証する。

 「我々はリングに立つボクサーのようなもので、何発目に左を出すとは言わない。勝つことが大事で、勝つプロセスを説明することが大事ではない」。ソフトバンクグループの孫正義社長は7月28日、決算説明会でこう語った。

 だから様々な懸念が市場関係者などから持ち上がる。英アーム・ホールディングス買収決定後、具体的な戦略の言及を避けてきた孫社長に4つの「懸念」をぶつけた。

 IoT時代のプラットフォームで覇権を握る──。孫社長はアーム買収の狙いをそう語るが、20年後もモバイル向けのCPU(中央演算処理装置)やチップでアームが覇権を握っているという保証はない。米インテルや米グーグルといった巨大企業も当然、来るIoT時代を見越して投資を加速させている。

 そもそもアームはスマートフォン(スマホ)用半導体で急成長した。現在、スマホ向けチップの設計では95%のシェアを持つが、IoT向け半導体など含むマイクロコントローラーのシェアは25%にとどまる。拡大するIoT向け市場が金城湯池であることは衆目の一致するところで、IoT時代に次なるアームが生まれてくる可能性も十分にある。

 さらに、これまでプラットフォーマーとして覇権を握ってきたのは常にOS(基本ソフト)のシェアで独占的な地位を築いたプレーヤーだ。その覇権は、パソコン時代の米マイクロソフトから、スマホ時代の米アップル、グーグルへと移りつつある。

 IT(情報技術)業界におけるプラットフォーム事業は勝者総取りのビジネスであり、米国の巨人がIoT時代の到来を見逃すわけがない。例えばグーグルは2014年、家庭向けスマートホーム事業の米ネストを約32億ドルで買収。あらゆる家電、あらゆる機器がアンドロイドOSという共通のプラットフォーム上でつながる世界を目指している。

 そうした激烈な競争環境下で、ソフトバンク・アームグループは真の意味でIoT時代のプラットフォーマーと呼ばれる存在となれるのか。インテルのように、チップだけを提供するメーカーにとどまる可能性はないのか。

スマートフォン向けでは圧倒的な存在感を持つ
●アームの製品分野別の市場シェア
出所:ソフトバンクグループ
日経ビジネス2016年8月8日・15日号 16~19ページより目次