高度成長を支えた団塊以上の世代が作った事業モデルは過去のものになった。これまで存在感が薄かった50代の経営者が活躍しなければ日本の将来は危うい。自分を引き上げた上の世代の成功体験を乗り越える姿勢を示せるかどうかが問われる。

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島 耕作氏 68歳
1947年山口県生まれ。70年に早稲田大学を卒業、初芝電器産業入社。広告課を皮切りに国内外で重要なプロジェクトを成功させ要職を歴任。2008年に初芝五洋ホールディングス(現TECOT)社長に就任。2013年に会長に退く。(イラスト=弘兼 憲史/講談社)
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 「常に日の当たる場所で脚光を浴びてきた」と自負する世代がいる。高度成長をけん引し、バブル景気と崩壊を働き盛りの時期に体験した団塊世代。その世代の経営者で、ひときわ光を放つ男が『島耕作』だ。

 世界を股にかけた活躍や派閥の論理にくみしない信念で社長に上り詰めた「スーパーサラリーマン」。彼は2013年、会長に退いた。

 多くの団塊世代は産業界の第一線から退こうとしている。島耕作もその一人。生みの親である漫画家、弘兼憲史氏が島耕作の思いを代弁する。

 団塊世代は戦前教育を受けた人たちとは一つ断絶があって、戦後生まれの大きな集団の中の兄貴分という感覚があります。だから、50代より下の世代はみんな、私たちの弟分というイメージですね。団塊世代が先頭に立って、大きな集団を引っ張ってきたという気がしています。

 学生運動をやっていたのは同世代のせいぜい2%ぐらいでしょうか。ただ、ものすごい競争社会をかいくぐってきたという気持ちがあるし、大手企業のトップには学生運動に関わってきた人が少なくありません。

 進学の時からものすごい競争で、さらに大企業に入って経営陣に就く人というのは、相当に勝ち残ってきたわけです。自己完結していて、一家言を持っている分だけ、下の世代には「鬱陶しい」かもしれません。逆に、我々も今の50代については、頭が良くて分析力にはたけているが、実行力がないという印象を持っています。

 団塊世代には、ガンガン高度経済成長を進めてきた、時代のトレンドを作ってきたという自負が強い。常にスポットライトが当たってきた。そして年寄りになってからも、年金などで下の世代に負担を強いるという、悪い意味でもスポットライトを浴び続ける。

<span class="org">作者:弘兼憲史氏</span>
作者:弘兼憲史氏
島耕作と同じ年齢の団塊世代。松下電器産業(現パナソニック)を経て、1983年に連載を始めた。(写真=竹井 俊晴)

 じゃあ、50代はどうすべきか。僕としては、我々のような先輩の話はあんまり参考にするなと言いたいですね。団塊世代は経済成長を自分たちの手柄だと思っているかもしれないけど、あれは単に運が良かっただけ、時代が良かっただけだと僕は考えています。

 島耕作が50代の頃は、バブルは終わっていても、それまでの勢いでまだ突っ走れた時期でしょう。家電業界では韓国勢が台頭してきたけれど、まだ負けないという気概でやれた。しかし、今や韓国、中国に負け、台湾にも追われている。日本はもう一度チャレンジする立場になったと言ってもいい。

 これからの経営者には、立て直す力、胆力、行動力が必要になる。島耕作の作品の中でも、後任の社長になった国分圭太郎という人は、ここぞという時に肝が据わっている。腹を据えて決断する人間が一番トップにふさわしいと考えて選びました。

 今まで頭を押さえつけてきた団塊の世代はもういなくなる。50代にはそれまでためていた不満や鬱憤を爆発させるつもりで頑張ってほしいですね。日本をもう一度立て直すという覚悟を持ってやってほしいと思います。(談)