201X年9月、米アップルの新製品発表会は熱気に包まれていた。ステージでティム・クックCEOが取り出したのは、いつもと同じiPhone。だが、口元には不敵な笑みが浮かぶ。すると次の瞬間、ディスプレーが映画のスクリーンのように大きく横に広がった。「ようこそ、有機ELの新時代へ」──。これは想像上の話だが、有機ELの台頭でディスプレー産業は再び成長期に入る。現在リードするのは韓国勢で、シャープを買収した台湾の鴻海精密工業も後を追う。中国企業も投資競争に踏み出す中、日本企業の存在感は乏しい。「究極のパネル」はサプライチェーン全体にも変革を迫る。液晶市場で苦しんだ日本企業は、脇役に甘んじるしかないのか。

(齊藤 美保、宗像 誠之、武田 健太郎、上海支局 小平 和良)

液晶と異なり曲がるのも有機ELの特徴。縦長のスマートフォン画面が必要に応じてワイドスクリーンに変身する。ディスプレーが変われば、タブレットやパソコンが不要となる?(写真=クック氏:Getty Images、画面内:MarcaMedia/アフロ CG=千塚 鉄也 デザイン=藤田 美夏)
有機ELとは

有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)は発光ダイオードの一種。電圧をかけると励起された有機物が発光する。自ら発光するため液晶のようなバックライトが不要。薄く、消費電力が低いディスプレーや照明に利用できる。

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日経ビジネス2016年5月30日号 26~27ページより目次