AI(人工知能)が産業界の勢力図を塗り替え始めた。クルマを支配する頭脳は、機械を手足として使う自動運転用のAIだ。IT活用で先駆けた金融業界では、既にAIが人間を駆逐している。欧米企業はAIの破壊力に気付き、日本勢を周回遅れにしつつある。世界中の産業で激化する攻防戦。AI抜きには戦えない。

(島津 翔、武田 健太郎、小笠原 啓、山崎 良兵)

3分で理解 AIって何?

 人工(Artificial)の知能(Intelligence)を意味する略語。人間が持つ知的能力をコンピューターで再現するものは、どんな形であれAIと呼ばれ得る。明確な定義がないためAIと銘打った製品が乱立しているが、重要なのは学習機能を持っているかどうか。膨大なデータを学習することでAIは判断能力を磨き、人間にしかできなかった領域に進出しつつある。処理速度が求められる分野では、既に人間を凌駕するようになった。

企業経営に大きな3つのインパクト
1.産業秩序が激変

AIを武器に新勢力が台頭し、対応できない既存勢力は没落する。売上規模など従来の序列は関係ない。自動運転の頭脳はAIだ。変われないメーカーはIT企業の軍門に下る。

 PART1 自動車を「操る」影の支配者

2.機械と人間の逆転

判断能力を持つようになったAIが、人間の仕事を奪い取っていく。安いコストで無限に働くAIが、金融や医療分野で高給取りの専門家を“クビ”にし始めた。

  PART2 人間を「駆逐」したウォール街の王者

3.独自性の再定義

AIの進化は止められない。各社が独自に磨いてきた人間に依存する作業を再定義することが、AIと上手に付き合うカギだ。製造業や流通の最前線にAI活用のヒントがある。

  PART3 優秀な「教師」が日本の切り札

<b>手塚治虫氏の名作「鉄腕アトム」をモデルにしたAI搭載ロボットATOM。家族の顔を覚え、会話が楽しめる。講談社が4月に発売開始した全70号の雑誌「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」についてくる部品を組み立てて完成させる</b>(写真=ATOM:北山 宏一  &copy;TEZUKA PRO / KODANSHA)
手塚治虫氏の名作「鉄腕アトム」をモデルにしたAI搭載ロボットATOM。家族の顔を覚え、会話が楽しめる。講談社が4月に発売開始した全70号の雑誌「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」についてくる部品を組み立てて完成させる(写真=ATOM:北山 宏一 ©TEZUKA PRO / KODANSHA)

本特集の連動記事を5月22日より日経ビジネスオンラインでお読みいただけます。

日経ビジネス2017年5月22日号 24~25ページより目次