植物由来の成分で既存の食品を置き換えようという動きは、肉だけではない。卵も魚も牛乳も、将来の市場拡大を期待して“偽物”の開発競争が加速している。だが、「地球を救う」という壮大な計画とは裏腹に、ビジョン先行の危うさも露見する。

アフリカを放浪し、社会課題の解決を志して米ハンプトン・クリークを創業したというジョシュ・テトリック氏。強気のマーケティング姿勢が騒動を巻き起こしている(写真=林 幸一郎)

 今年3月24日、米ハンプトン・クリークのジョシュ・テトリックCEO(最高経営責任者)は、従業員向けに1通のメールを出した。

 「不正確な報道で米証券取引委員会(SEC)と米司法省(DOJ)が調査をしていたが、現時点で我々の会社や社員による不正を見つけられずに終了した」

 同社は、卵の代わりに植物性タンパク質を使ったマヨネーズやドレッシング、クッキーなどの食品を開発・販売するスタートアップだ。2011年にテトリック氏が創業し、「Just(ジャスト)」というブランドで展開している。

 昨年8月、米ブルームバーグはハンプトン・クリークが同社製品を店頭からひそかに大量に買い戻していたと報道。会計処理にも疑問を投げかけ、SECとDOJが調査に乗り出した。投資家に対して、過度な期待を抱かせる事業計画を示していたとも報じられている。テトリック氏のメールは、この調査が終了したことを報告するものだ。

 ハンプトン・クリークは、PART1で紹介した米ビヨンド・ミートなどとともに、「食革命」のフロントランナーとみられてきた。ビル・ゲイツ氏が絶賛し、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが選んだ「最もイノベーティブな会社」(15年)の一つだ。現地報道によれば、投資家から昨年8月までに少なくとも2億2000万ドル(約250億円)を集め、企業価値10億ドル(約1120億円)の「ユニコーン企業(未公開の優良会社)」を目指していた。三井物産も15年に約18億円を出資している。

 その会社が、世間を騒がせ続けている。不正疑惑の調査だけではない。同社のマーケティングに対して14年、英蘭ユニリーバが卵不使用の製品を「マヨネーズ」と呼ぶことは不正競争に当たるとして訴えを起こした。結局、訴えを取り下げたが、15年には米食品医薬品局(FDA)が同社製品はマヨネーズの定義に反すると警告。最終的にラベルの表示方法を修正することで、「Just Mayo」というブランドを継続使用することが認められた。

 一方、ハンプトン・クリークは、全米卵協議会(AEB)が同社製マヨネーズの販売に対して妨害工作をしていると主張。米農務省が15年9月から約1年をかけて調査し、AEBに違法ではないが不適切な行為があったと認定した。