いち早く航空機部品をIoT化して故障を予知するなど時代を先取りしてきたGE。そのGEが今、グループを挙げて取り組む大改革がある。工場のデジタル化だ。

2015年に買収した仏アルストムの工場を訪問したジェフリー・イメルトCEO(中央)(写真=ロイター/アフロ)

 「この工場の運営は全てPoka-Yoke(ポカヨケ)を基本に構築されているんだ。ポカヨケは知っているかい? 日本で生まれたリーン生産手法の一つだ」

 米国ペンシルベニア州のピッツバーグから北にクルマで約50分。グローブシティーという小さな田舎町に、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のディーゼルエンジン工場はある。

 2つある工場のうち、ジェフリー・スミス氏が管理を任されているのは、自社製エンジンの中古品を回収して新品同様に生まれ変わらせる再生工場だ。

 GEは2005年ごろから、リーン生産方式を導入してきた。手本は米モトローラが開発した品質改善手法の「シックスシグマ」。スミス氏はこのシックスシグマでブラックベルト(黒帯)を取得した達人。日本の工場を訪問してトヨタ生産方式を学んだ経験もある。

 スミス氏の工場は今、世界中のGEグループ企業の注目の的となっている。GEのCEO(最高経営責任者)であるジェフリー・イメルト氏が16年に本格化させた「ブリリアント・ファクトリー」構想。世界に7つしかないそのモデル工場に、グローブシティーの再生工場は選ばれた。

あらゆる作業をデジタルデータに

 ブリリアント・ファクトリーとは、工場内のあらゆる活動をデジタルデータとして蓄積できる工場のことだ。

 工場で実施されているのは、「機械による加工」と「人による作業」の2種類。近年、よく聞く「IoT(モノのインターネット)」や「インダストリー4.0」といった言葉は、機械にセンサーや通信機などを搭載することで、加工にまつわるあらゆるデータを自動で集められる仕組みのことを指す。

 一般的な工場では、機械の加工をデジタル化する取り組みは進んでいても、人の作業をデジタル化する取り組みはほとんど進んでいない。グローブシティーの工場はここで突出している。機械の情報も人の情報もビッグデータとして集積することが可能で、モデル工場に選ばれた理由はそこにある。

 イメルト氏が工場のデジタル化を通して狙うのは、ビッグデータを活用することでこれまでにないサービスを顧客に提供できる「デジタル・インダストリアル・カンパニー」になることだ。

 イメルト氏は01年のCEO就任以来、その布石を着々と打ってきた。

 まず、自社の事業ポートフォリオを大きく転換。M&A(合併・買収)を通して、メディア運営から金融、重電インフラまでを手掛ける多角経営企業から、電力やガス・油田、航空機や交通インフラなどに特化する企業に変身を遂げた。

事業を産業インフラ領域に集中
●イメルト氏のトップ就任後のGEの業績と事業の統廃合

 その集大成が、15年に103億ドルを投じて実施した仏アルストムの発電・送電事業の買収だ。これにより所有する電力関連設備が拡大し、電力の制御や保守に関するビッグデータを入手できる環境が整った。

工場のカイゼンと製品のカイゼンを同時に回す
●工場のデジタル化で実現できるカイゼンの循環

 次に打った布石がグループ全体のデジタル戦略を先導する横串の組織「GEデジタル」の設立だ。11年に米シスコシステムズから引き抜いた技術者を中心に、ビッグデータを収集して解析できる産業用のプラットフォーム「プレディックス(PREDIX)」を構築した。

 経営資源を産業インフラ領域に集中させ、自社の支配下にあるインフラ関連設備の数を増やす。そして、増やした設備からビッグデータをプレディックスに収集して解析する。そうすれば、例えば顧客に電力設備の故障を事前に知らせる保全予知サービスを展開したり、不具合があった場合は設計に反映して製品を改良したりすることができる。

 だが、まだ足らないピースが1つだけあった。それこそがブリリアント・ファクトリーだ。一体どういうことか。

 具体的な事例で見ていく。前出のGEトランスポーテーションのグローブシティー再生工場と、リーン生産方式ではグループ工場トップに選ばれているGEヘルスケアの日野本社工場だ。