アイドル産業は、他の産業ではまず見られないきめ細かい顧客管理も実践している。双方向の対話やタイムリーな情報対話までやっていることは一見、当たり前のこと。だが、アイドル産業のそれは、レベルが違う。

アイドルの顧客対応として代表的な握手会。アイドルと直接触れ合える(写真=時事通信フォト)

 嗜好の細分化から販売手段の消滅、デジタル化まで、次々に襲い掛かってきた環境変化を、ビジネスの仕組みを進化させることで乗り越えてきたアイドル産業。不安定な産業だからこそ、「様々な工夫をせざるを得なかった。危機感が産業を育んだ」。かつてビクターエンタテインメントやアミューズに籍を置き、アーティストのプロデュースを手掛けてきた齋藤英介は話す。

 そんな危機意識がもたらしたものは変化対応力だけではない。原価の数十倍の関連商品が飛ぶように売れる大元には、「驚きの顧客囲い込み力がある」。こう話すのは、国内大手金融グループに務める清水礼二(仮名)だ。

年間のアイドル消費は30万円

 独自の手法による経済予測で知られ、出版した著書は数知れない人気エコノミストだが、その素顔は大変な隠れアイドルオタク。強烈な顧客管理で猛烈な消費をしている張本人だ。

 2015年に偶然、動画配信サイト「YouTube」で韓国アイドルグループ「Apink(エーピンク)」のミュージックビデオを見て以来、夢中になった。その年の夏、海外旅行の帰りにソウルに立ち寄り、Apinkの過去のCDを大量に購入。ファンクラブにも入会し、コンサートやファンミーティングにも参加した。

 昨年は、念願だったソウルコンサートに初参戦。チケット代行で購入した席は最前列に近いスタンディング席。韓国人の若いファンとぎゅうぎゅう詰めになりながら4時間立ちっぱなしだったが、現地コンサートに参加した感動はひとしおだった。韓国への渡航費なども含め、昨年Apinkに費やした金額は30万円以上。その熱が冷める気配はない。

 なぜそこまで囲い込まれるのか。実はアイドル産業には、清水も身を置く金融産業が逆立ちしても勝てないような、きめ細かな顧客管理がある。以下、Apinkに限らず、アイドル産業の顧客掌握術を見ていこう。