スポットライトを浴び、笑顔を振りまくアイドル。かわいい衣装で歌って踊れば、ファンは大きな声援で応える──。そんな映像に夢中になる娘や息子の姿を見るたび、50代中盤に差し掛かったアナタはいつもこう思っているはずだ。

 「アイドルに興味がなくなって、もう何年たつだろう」

 昔はそうじゃなかった。今からちょうど39年前、そう1978年4月4日、まだ中学生だったアナタは、後楽園球場で開かれたキャンディーズの解散コンサート「ファイナル・カーニバル」の現場に、確かにいた。

 その後も松田聖子、中森明菜といろんなアイドルを好きになり、ラジオ番組をエアチェックしてはカセットに録音、お小遣いで買ったウォークマンで様々な歌を聞いた。おニャン子クラブの誰が好みかで友達とむきになって議論し、グッズを買ったこともある。

 それが、いつの頃からアイドル自体に関心がなくなり、中間管理職になった頃には歌番組を見ても、一人の名前も言えなくなった。

 日経ビジネスの読者から“最も遠い産業”、アイドルビジネス。そんな分野に、日本企業が抱える様々な課題を解決する多くのヒントが隠されている、などと主張して何人の読者が信じてくれるだろう。

不安定だからこそ進化した産業

 だが、それは必ずしも荒唐無稽とは言い切れない。

 日本企業が今後繁栄する上で、クリアせねばならない課題は少なく見積もっても3つある。

①時代の変化に対応できない
②顧客のニーズがつかめない
③グローバル化が進まない

 結論から言えば、アイドル産業は不安定な業界であるがゆえに、経営システムを独自に進化させざるを得なかった。その結果、ずば抜けた「変化対応力」と「顧客管理力」「グローバル力」を磨き、今に至っている。戦後72年間、並木路子から嵐まで、紆余曲折を経ながらエンターテインメント産業の中核に彼らが居続けるのはその紛れもない証拠だ。

 前代未聞の日本企業再生論、まもなく開演。

=文中敬称略(齊藤 美保)

CONTENTS


日経ビジネス2017年4月3日号 28~29ページより目次