東京の成長に陰りが見える中、それでもニューリーダーは日本の牽引役にこだわる。 念頭にあるのは、ヒト・モノ・カネを地方から吸い上げる従来モデルではない。 金融とものづくりの育成。そんな新しい価値で世界に打って出る。

(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)

(写真=竹井 俊晴)
PROFILE
[こいけ・ゆりこ]1952年生まれ。兵庫県芦屋市出身。76年エジプト国立カイロ大学文学部卒。アラビア語通訳、テレビ東京のニュース番組「ワールドビジネスサテライト」初代キャスターを経て、92年から国会議員。2003年環境大臣に就任、「クールビズ」を普及させる。防衛大臣、自民党総務会長を経て、16年8月から現職。

日本全体を引き上げる役目は東京が担い続ける。
すべての自治体が国に財政依存しないのが地方分権。

 問 都知事就任から半年が過ぎました。改めて東京をどのような都市にしたいと考えていますか。

 答 『東京大改革』を掲げ、まずは都政の体質を変えようとしています。情報公開を進め、予算編成時の政党の復活予算という慣習をやめました。それから都庁の職員が都議会議員の質問まで書いてあげる、答えもついでに書くと。まあ、国会でもやっていますけど、それも禁止しました。

 都政のいわゆる基盤となる部分を整備しているわけです。一つひとつは小さな改革ですが、積み重ねれば大改革につながります。その上で何をするか。大きな柱として国際金融都市の復活を訴えています。

 問 スマートシティー構想ですね。

 答 私は1980年代後半のバブル経済、その後の崩壊で日本金融が大きく揺れる時期に、『ワールドビジネスサテライト』のキャスターを務めていました。金融のダイナミズムを伝える立場から見ていると、結局、バブルの根幹は日本の資産を動かすことでした。

 だからバブルが弾けると、外資系はさっさと(欧州の金融都市である独)フランクフルトへ向かい、シンガポールや香港にアジアの金融都市という立場を奪われました。国際金融都市の復活とは、単に1700兆円の日本の個人資産を取り戻そうというだけではありません。内でぐるぐる回すだけでなく、もっと外からおカネを呼び込んでいかなければならない。

法人地方税の減税は選択肢

 トランプ米大統領がメキシコ国境にウォール・ストリートをつくると言っていますが、私は(東京証券取引所がある)兜町から大手町にかけて日本のウォール・ストリートをつくります。

 問 トランプ大統領の保護主義的な政策は向かい風ではありませんか。

 答 確かにアメリカ・ファーストで外資を排除する流れがありますが、逆にこれは東京にとってチャンスじゃないかと思っています。もちろんマーケットは違いますよ、地理的な。でも東京もいいじゃないといって、高度人材が東京で働こうという気になるのではないかと期待しています。人材を呼び込むために、インターナショナルスクールや開業ワンストップセンターをつくります。すでに検討会も立ち上げました。

 2020年に東京のGDP(域内総生産)を、現在の95兆円から120兆円に引き上げたい。こうした環境が整えば、金融が占めるGDPの比率を5%から倍の10%に引き上げられ、十分に達成できるのではないかと考えています。

11回目となる東京マラソンには3万6000人が参加。小池氏はスターターを務めた(写真=田村 翔/アフロスポーツ)

 問 法人税は国税と地方税に分かれていますが、外資を呼び込むためには地方税の大胆な減税ということも念頭にあるのではないでしょうか。

 答 そうですね。米国の大規模減税の出方なども見ていきたいと思いますが、一つの選択肢ではあります。法人税は東京の“虎の子”。エンジンの役割を担う半面、景気に影響される面もあり、工夫が必要になります。ただ、私はアベノミクスを支えるのは東京の役目だと思っていまして、その意味でも国際金融都市の復活は国と連携しながら進めていくつもりです。

 問 規制緩和については。

 答 考えています。例えば待機児童問題。商業ビルはオフィスとして貸し出した方が稼ぎがいいので、わざわざもうからない託児所や保育園にしません。だから容積率の緩和といったメリットを付け、企業内保育園を増やします。でも企業内保育園の普及には満員電車も何とかしなきゃいけない。

 そこで今、快適通勤についても検討しています。通勤電車は働く人にとって重要なインフラ。住みやすいかどうかは日本人も外国人も同じでしょ。だから東京はスマートシティーであり続けなければ。検討会でも『これをNATOにしませんよ』と言ってます。

 問 北大西洋条約機構のことですか。

 答 いえ。ノー・アクション・トーク・オンリー(口だけで動かない)の略です(笑)。それと、国との連携を進めるためには国家戦略特区を活用するのがいいと思っています。前任者はあまり熱心ではなかったようですけど……。