もう東京に依存しない。地方が自活の道を選び始めている。内在するヒト、モノ、カネをうまく使い、独自の生態系を築きつつある。東京はどう再成長を遂げるのか。国際金融都市の機能を磨くべきだ。

独自経済圏を目指す地方都市が各地で生まれている
●ユニークな試みを進める主な地方自治体の事例
(写真=左上:佐々木 譲、左下:諸石 信、右下:野口 勝宏)

 「今日は跳び箱を使った体操にしましょう」。指導者がそう呼びかけると、子供たちからひときわ大きな歓声が上がった。

 新潟市内5カ所で子供向け体操教室を展開するオールアルビレックス(新潟市)。体操の技術習得そのものが目的ではなく、体操を通じてあらゆる運動神経を鍛える「コオーディネーショントレーニング」の手法を取り入れた、日本では珍しいスクールだ。

 オールアルビレックスの経営者は、34歳の菅野文宣氏。さいたま市出身で英国の大学を卒業後、東京の広告代理店に勤務。その後、スポーツに関連するビジネスを起こしたいと考え、縁もゆかりもない新潟にやってきた。

 今、菅野氏のような起業を目指す若者が続々と新潟に集まっている。首都・東京ではなく、なぜ新潟なのか。

 その答えが、新潟県内で大学院大学・大学、専門学校、高校など36校を運営するだけでなく、医療福祉、商社、アパレル、建設と幅広く事業を手掛けるNSGグループ(新潟市)にある。売上高は2017年9月期に1000億円を突破する見通しで、新潟で知らない者はいない巨大グループだ。

 「東京ではそれほど知名度がないので、最初は怪しい団体なのかと思いましたよ」。若者の起業支援をうたったNSGの広告を見た第一印象を、菅野氏は冗談を交えて振り返る。

 そのNSGの起業支援は、グループの経営大学院である事業創造大学院大学を通じた教育にとどまらない。事業計画の書き方、法人登記の手続きといった起業のノウハウから資金援助、起業準備期間中の給与支給までフルパッケージで提供してくれる至れり尽くせりの内容だ。

 NSGに入社した菅野氏は企画本部に配属。ここで子供向け体操教室のビジネスプランをまとめたが、それに対して熱血指導が入った。

 「教室を持つと固定費がかさむ。子供が学校に通う昼間は教室をどう活用するのか」「資金繰りの計画が甘いのではないか」。定期的に開かれるプレゼンテーションで上司から厳しい指摘が飛び、その度にプランを修正する。

 そんな日々を9カ月間過ごした後、ようやく起業が決まった。この間、グループからは給与が支払われ続け、さらに起業の初期費用約1000万円も拠出してもらった。

 「私もそうだったが、なんとなく起業したいと思っている若者は多い。でも知識やおカネ、コネがなく起業のハードルは高い。フルパッケージで支援してくれるのはありがたかった」と菅野氏は話す。

 起業後も「新潟の地の利」(菅野氏)に助けられた。東京のように競合サービスがひしめく環境ではないため、耳慣れない概念であるコオーディネーショントレーニングの考え方をじっくりと浸透させながら、堅実に事業展開できるからだ。しかもグループが抱えるスポーツ系専門学校の優秀な卒業生を採用できる利点もある。菅野氏は新潟市内で事業基盤を固めた後に、教室の全国展開を視野に入れている。