東京が成長すれば、地方、そして日本全体が豊かになる。そんな東京発トリクルダウンは幻想でしかない。東京と地方の分断が進む中、元気なのは小さな商圏で勝負するローカル企業だ。
東京駅から特急電車で1時間余り。北関東の主要都市である茨城県水戸市の玄関口、JR水戸駅から外へ出ると、目の前にぽっかりと大きな穴が開いたような荒れ地が広がる。
ここにはかつて西友が運営する百貨店「LIVIN(リヴィン)水戸店」があった。しかし、2002年に米ウォルマート・ストアーズの傘下に入った西友が合理化を推進。ウォルマートのグローバル戦略に基づき、09年に閉鎖した。
昨年、長らく遊休地だったこの土地に地権者らがマンションやホテル、店舗、オフィスを入れた複合施設を建てる再開発計画を公表。マンションは東京に本社を置くフージャースコーポレーションへ譲渡し、オフィスには三井住友海上火災保険が入居する予定だ。
水戸市は100億円を超える総事業費の一部を補助金として拠出することを検討している。水戸駅前ににぎわいを取り戻そうという意図だが、駅前商店街の店主はため息をつく。
「たくさん地元のおカネを使っても、結局は東京に振り回されるだけ。効果なんて期待できないよ」
都市政策の専門家である明治大学公共政策大学院の市川宏雄専任教授は「地域の均等な成長という考え方はすでに役割を終えた。一極集中は経済合理性にかなっており、富を集めて東京の競争力を高めるべきだ」と説く。
地方からヒト・モノ・カネを集約することで東京が成長する。東京が生み出した経済価値は地方に波及し、結果として日本全体が豊かになる──。弊害を指摘する声はあっても東京一極集中が是とされてきたのは、そんな考え方があったからだ。
特に20年の東京五輪・パラリンピックが追い風になっている。30兆円規模の経済効果のうち、東京が恩恵を受ける直接効果は1兆3000億円にとどまる一方、観光需要といった地方も関係する付随効果が27兆円超に上ると試算されているからだ。
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