
「母親の物忘れが最近、ひどくなってきた。どうすればいいのか」──。認知症は個人の尊厳に関わる病なだけに、親を説得して医療機関に連れて行くのも簡単ではない。そんなとき活用したいのが認知症カフェだ。
オレンジカフェとも呼ばれるが、常設の店舗ではなく、自治体やNPO法人などが開催する交流の場だ。認知症で困っていることについて、医療や介護に精通したスタッフや同じような経験をした家族から、助言をもらいやすい雰囲気になっている。
2月週末の昼下がり、京都市中京区にある京町家で開かれたオレンジカフェ。認知症の患者と家族、そしてスタッフなどが入り交じり、コーヒーを飲んだり、クロスワードパズルや積み木を楽しんだりする姿があった。
テーブルの一つで患者の家族4人が談笑していた。「今日ここまで来るのも準備に時間がかかって、ついけんかしちゃった」。ある家族がつぶやくと、別の家族が「うちもいつもそう。でも怒らず、せかさず、ほめてあげる。これが重要よね」と言い、全員がうなずく。
「認知症にどう向き合ったらいいのか分からないという家族は多い。カフェには家族が病を受けとめるのを手伝うという目的もある」。カフェを運営する、NPO法人オレンジコモンズ理事長の武地一医師(56)はこう話す。
オレンジカフェは政府の認知症施策「新オレンジプラン」の柱でもあり、全国の市町村で設置が進められている。全国で2000カ所以上あるとされ、自治体のウェブサイトなどで開催場所や時間などの詳細が公表されている。医療機関ではないため、診察を受けられるわけではない。それでも地域が一体となって、認知症の患者とその家族を支える取り組みの一つと言えるだろう。
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